研究課題/領域番号 |
18H03168
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
曽根 文夫 (山崎文夫) 山口県立大学, 看護栄養学部, 教授 (80269050)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 冷え / 運動介入 / 筋力 |
研究実績の概要 |
日常生活の中で体の冷えを感じる女性は多く、成人女性を対象とした調査では約半数の人に冷え症の自覚がある。冷え症は、身体(特に下肢)の強い冷感から生じる苦痛のみならず、不眠、肩こり、便秘などを随伴症状とする。冷え症は特に女性の健康状態や生活の質を著しく低下させるものであり、その症状を緩和するための方策が必要である。 日常的に強い身体運動を実施している者は、運動習慣のない者よりも冷えの症状が軽度であることが示唆されており、身体運動は冷え症を改善する方策の1つになる可能性がある。そこで本年度は、若年女性の体の冷えの自覚症状に及ぼす3ヶ月間の軽度運動介入の効果を検討することにした。 女子大学生44名を対象として、運動群と対照群の2グループに分けた。運動群の対象者は3ヶ月間にわたり軽強度の運動トレーニングを行い、対照群の対象者はトレーニングを行わなかった。その介入の前後に体の冷えや心身の状態に関するアンケート調査を実施するとともに、体組成、筋力(背筋力、握力、両脚伸展筋力)を測定した。冷えの自覚症状の程度を示すスコアは、運動群では介入によって有意に減少したが、対照群では介入期間の前後で差がみられなかった。運動介入によって体脂肪率の減少傾向と筋肉率の増加傾向が認められた。運動介入によって背筋力と両脚伸展筋力は有意に増加したが、握力は変化しなかった。対照群では両脚伸展筋力のみ介入期間後に増加した。介入期間後における冷え症スコアの変化と両脚伸展筋力および背筋力の変化との間には有意な負の相関関係が認められたが、握力の変化との間には有意な相関はみられなかった。これらの結果から、3ヶ月間の軽度な運動実践は体幹および下肢の筋力増加とともに冷えの自覚症状を低減させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね研究計画の通りに研究が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究において3ヶ月間にわたる軽強度運動の実践により冷えの愁訴が減弱されることが示され、その生理学的要因として冷覚感受性の低下が関与することが示唆された。冷覚感受性が運動によって変化する原因として、運動時の体温上昇が体の冷えの減弱に関与している可能性がある。しかしながら、体温上昇を伴う運動が冷覚機能に及ぼす影響については明らかでない。そこで来年度は、冷え症者を含む若年女性を対象として、冷覚機能に対する運動の急性効果を明らかにすべく研究を推進する。
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