研究課題
消化管は外界と生体の接点であり、外界から受けた刺激をもとに生体へと情報を発信する。その一つであるGIP (gastric inhibitory polypeptide)は食事の刺激を受けて消化管から分泌され膵β細胞に作用しインスリン値を上昇させるのみならず、脂肪細胞に作用し、脂肪蓄積を促進することを示してきた。さらに、GIP受容体欠損マウスを長期間飼育すると寿命が有意に延伸することを明らかにした。このように、GIPシグナルは飢餓の時代には栄養の有効利用に重要であるが、飽食の現代にあってはかえってシグナルを抑制することが求められる。実際、骨格筋組織のFAP (fibro/adipogenic progenitor) 細胞にもGIP受容体は発現し、FAP細胞はGIPの存在下で効率よく脂肪細胞へと分化をして筋細胞への分化を抑制するが、GIPシグナルを抑制すると、骨格筋再生が進行することも明らかにしている。また、臨床的にもGIPシグナルの抑制(αグルコシダーゼ阻害薬)は脂肪量の減少と筋肉量の増加に相関するという結果も得ており、マウスを用いた基礎研究の結果と合致するものである。今後、薬剤以外の方法でGIPシグナルを抑制できないか、検討を続けている。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していたように、遺伝的にGIPシグナルを欠損することでGIPシグナルを抑制する意義を確認できたので、今後、GIPシグナルを抑制する食餌の意義を解明する予定である。
研究代表者は2020年4月から施設を異動するが、もともと共同研究者のいた施設への異動であり、問題なく進捗できると考えている。今後も、GIPシグナルを抑制する意義ならびにその食餌を用いた方法について研究を推進する予定である。
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Journal of Diabetes Investigation
巻: 11 ページ: 389~399
10.1111/jdi.13115