研究課題/領域番号 |
18H03172
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 英雄 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00400672)
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研究分担者 |
柳川 徹 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10312852)
磯辺 智範 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70383643)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
岡田 浩介 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (80757526)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NASH / 性差 / 女性ホルモン / エストロゲン / Nrf2 / サルコペニア |
研究実績の概要 |
サルコペニアは進行性および全身性の骨格筋の減少と筋力の低下を特徴とする疾病病態である.最近,サルコペニアとNAFLDの病態形成には,女性ホルモン欠乏,身体活動量低下,インスリン抵抗性,慢性炎症,マイオスタチン増加,炎症性サイトカイン増加,ビタミンD欠乏などの共通の因子が介在し役割を演じており,サルコペニアとNAFLDには病態生理学的重複と循環的連関が存在することが明らかになっている. 肥満のないNAFLDは高齢女性に高頻度に認められ,また,NASHの有病率が高率である.肥満のないNAFLDでは,内臓脂肪の増加に加えて,骨格筋量と筋力の減少と筋組成の劣化(サルコペニア変化),これに関連した耐糖能異常が重要な病態因子であると考えられる. Sqstm1およびNrf2遺伝子二重欠失 (DKO) マウス はヒトメタボリック症候群のモデルである. 2019年度においては,DKOにおける表現型の性差について解析をおこなった.雌は閉経後にGut-Muscle axisやGut-Liver-Muscle axisの臓器連関によりサルコペニアの形成(筋湿重量と筋力の減少,筋線維束の萎縮と周囲脂肪化,タイプI線維 (I)の増加とタイプII線維 (II)の減少) に至ることが判明した.すなわち, 背景病態として,肥満, dysbiosis, LPSの産生増加, 腸管のバリア機能低下, Kupffer細胞のLPS貪食能の減弱に誘導される高LPS血症による過剰な炎症性障害,加えて女性ホルモン欠乏が重要な因子と推測される.閉経後における女性ホルモン欠乏とそれによるNrf2活性化の欠如がサルコペニアを誘導し,さらに肝病変を進展させると推測された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
体重,摂餌量ともに,DKO雄マウスは若齢時から加齢とともに増加するのに対し,DKO雌マウスは,若齢時ではWTと同程度であり30週齢以降に急激に増加した.内臓脂肪量と骨格筋量を測定したところ,DKOオスマウスでは,若齢時から体重あたりの内臓脂肪量,骨格筋量が徐々に増加した.一方,DKOメスマウスでは,30週齢で内臓脂肪量の増加,体重あたりの骨格筋量の減少が認められ,内臓脂肪量と骨格筋量のアンバランスが生じることが判明した.骨格筋ではサルコペニアの形成(筋湿重量と筋力の減少,筋線維束の萎縮と周囲脂肪化,タイプI線維 (I)の増加とタイプII線維 (II)の減少) に至ることも判明した.これらの雌マウスの表現型に影響するとされるNrf2と女性ホルモンについて,各種遺伝子改変マウスを作製し,病態解析を展開する予定であったが,マウスの作製に時間を要している.次年度の研究計画に繋げていきたい.
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今後の研究の推進方策 |
NAFLDは肝疾患ではあるが,肝代謝の異常に加えて体組成の異常が重要な病態因子であると考えられる.特に骨格筋の量的および質的な異常は重要な病態因子であると考えられる.今後の研究では, 骨格筋特異的Keap1 knockout (Nrf2過剰発現) マウスとNrf2 knockout マウスを作製する.さらに, DKOマウスの骨格筋について,Nrf2の細胞特異的遺伝子レスキューマウスを作製する.高脂肪/果糖食による肥満と代謝性高LPS血症の病態のもと,Nrf2と女性ホルモンが閉経後のサルコペニアの抑制因子であるかを検証する.Nrf2と女性ホルモンがLPSの処理と防御機構を強化し,サルコペニアを抑止する分子メカニズムを臓器連関の立場より解明していく.
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