研究課題
p62およびNrf2遺伝子二重欠失(DKO)雄性マウスは,通常食摂餌により壮年期に肥満を伴い脂肪性肝炎を自然発症する新規NASHモデルマウスである.更に,雌性マウスは,ヒトNASHと同様に閉経前後に病態が加速度的に進行する.本研究では,このDKOマウスにおける脂肪性肝炎の進展機序について,腸-肝の臓器連関の視点から解析した.8から50週齢の雄性および雌性DKOマウスについて,脂肪性肝炎の肝病変,便中および血清LPS量,腸内細菌叢の変化について比較解析を行った.雄性DKOマウスは,30週齢で肝線維化を伴う脂肪性肝炎を自然発症した.DKOマウスでは,腸内細菌叢のグラム陰性菌(PorphyromonadaceaeおよびParaprevotellaceae)が増加し,便および血清中のLPSが増加した.更に,腸管透過性が亢進しており,これらの変化による門脈からのLPS肝流入増加がDKOマウス脂肪性肝炎発症の原因と考えられた.一方,雌性DKOマウスは雄性DKOマウスと比して,体重増加および脂肪性肝炎進展は遅延するが,壮年期以降に急激に増悪し,この変化は血中のestradiolの低下と同期していた.更に,雌性DKOマウスではグラム陰性菌の増加が抑制されており,性ホルモンが腸内細菌叢の変化に関与し,脂肪性肝炎進展を抑制する可能性が示唆された.DKOマウスの脂肪性肝炎の発症と進展には,腸内細菌叢の変化によるLPSの産生増加と,腸管透過性亢進による肝へのLPS流入増加による腸肝連関がその中心的役割を果たすと考えられた.DKOマウスでは,腸-肝の臓器連関の異常により脂肪性肝炎を発症した.更に,本マウスではヒトNASHの臨床病型に類似する性差が認められ,女性ホルモンにより腸-肝連関が修飾されている可能性が示唆された.腸-肝の臓器連関の異常は,NASH治療の新規標的と成り得ると考えられた.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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