研究課題/領域番号 |
18H03173
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石井 幸雄 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80272194)
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研究分担者 |
森島 祐子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10375511)
松野 洋輔 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30633177)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 老化 / 肺 / 転写因子 / 酸化ストレス / アンチエイジング |
研究実績の概要 |
老化を遅らせることが健康寿命延伸の最も本質かつ有効な方法である。老化のスピードは環境因子に大きく影響される。肺は環境因子に対するファーストラインの防御を司る組織である。従って、肺のストレス消去能と老化のスピードには密接な関係があるものと思われる。Nrf2は酸化ストレスなどの環境因子で活性化され、抗酸化遺伝子や抗炎症遺伝子など生体防御に関わる遺伝子群を統一的に誘導することで、細胞レベルのストレス消去の基幹をなす転写因子である。Nrf2の発現低下や機能不全を有する個体では慢性的なストレスにさらされ、老化スピードが増加することを仮説とし、Nrf2の老化に及ぼす影響をマウスを用いて検討した。清浄空気曝露、標準飼料摂食下に飼育したNrf2欠損マウスは、野生型マウスと比べ、80週齢までの時点で死亡率、および主要臓器の老化関連マーカーの経時的変化に明らかな差異を認めないことを確認した。Nrf2は誘導型のストレス防御システムであり、本飼育環境下においてはNrf2活性化そのものが限定的であると考えられた。従って、Nrf2を活性化させたモデルを用いて、老化に及ぼす影響を検討した。野生型マウスに、Nrf2の誘導的活性化化合物としてスルフォラファンを投与し、清浄空気曝露、標準飼料摂食下に飼育した。同条件下では、Nrf2誘導的活性化の有無による死亡率や老化関連マーカーの経時変化に差異は見られず、非ストレス環境におけるNrf2活性化の老化に及ぼす上乗せ効果は限定的と思われた。続いてストレス環境下でのNrf2活性化の老化におよぼす影響を明らかにすべく、ストレス刺激を与えたNrf2欠損マウスを用いて検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではNrf2、特に肺で活性化されたNrf2の老化に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。初年度は非ストレス環境下におけるNrf2の動態と老化の関係を明らかにし、当該年度は同様に非ストレス環境下におけるNrf2の誘導的活性化と老化の関係を検討しえたため上記評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
上述のごとく、2018年度は非ストレス環境下におけるNrf2の動態と老化の関係を、2019年度は非ストレス環境下におけるNrf2の誘導的活性化と老化の関係を検討した。したがって、2020年度研究では、ストレス環境下におけるNrf2の動態と、Nrf2活性化の老化におよぼす影響を解析する。老化に関係するストレス刺激として喫煙曝露を行うとともに、老化関連疾患モデルとして肺非結核性抗酸菌症モデルを作成しする。Nrf2欠損マウス、および同系の野生型マウスに喫煙曝露、およびM. aviumの経気道曝露を行い、各マウスの生存率、中間寿命を測定するとともに、肺のNrf2活性化の程度を経時的に確認する。喫煙曝露モデルでは、肺組織、血液、および尿における酸化ストレス、抗酸化力の程度を測定する。非結核性抗酸菌感染モデルでは主要臓器の菌量を経時的に測定するとともに、これら臓器の老化マーカーや、酸化ストレスの程度を評価する。これらの結果を、それぞれのモデルでNrf2活性化の程度と比較することで、ストレス環境におけるNrf2活性化の老化に及ぼす影響を評価する。
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