研究課題/領域番号 |
18H03177
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
八十島 安伸 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00273566)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 食べ過ぎ / ショ糖 / 消化管ホルモン / おいしさ / 血糖値 |
研究実績の概要 |
今年度は、過剰摂取の脳・生理機構において、消化管ホルモンや血糖値の働きについて検討した。ショ糖過剰摂取行動モデル(Yasoshima and Shimura, 2015)を用いてショ糖溶液を過剰摂取するマウス(過剰摂取群)を作出し、そのマウスに消化管ホルモンの一つであるペプチドYY(PYY)を腹腔内投与したときの脳幹における神経活動の活性化をc-fos免疫染色法を用いて過剰摂取群と対照群で比べたところ、過剰摂取群では有意に少ないことがわかった。さらに、脳幹でのカテコールアミン(CA)陽性細胞の免疫染色性を評価したところ、CA陽性細胞でのc-fos発現も低下していた。以上から、ショ糖過剰摂取を行うと、PYYへの脳幹反応が低下することから、摂取後に脳内で生じる摂食抑制性の神経情報が低下してしまう可能性が示唆された。さらに、PYYの体内での増加がショ糖の甘味報酬性へと影響するのかどうかを味覚反応テストやリック構造分析で解析したところ、甘味の報酬作用やおいしさが低下していることを示唆するデータを得た。以上から、消化管ホルモンが甘味のおいしさを低下させること不十分となること、消化管ホルモンに由来する内臓感覚からの摂食抑制性情報が低下することの双方が過剰摂取が生じる原因である可能性がある。さらに、予備的な結果ではあるが、味覚および内臓感覚に関連する島皮質を損傷されたマウスにて過剰摂取を生じさせると、PYY投与に由来する脳幹反応が低下することを示唆するデータも得ている。 また、今年度導入した自動給餌・給水装置を用いた過剰摂取行動の自動計測についても、取り組みつつある。過剰摂取訓練の反復や中断期間の影響について検討したところ、反復効果は過剰摂取の形成速度の増大として現れることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度導入した自動給餌・給水装置を利用して、過剰摂取行動の形成と維持に関して、自動にてデータ計測を行うことを一つの目標としているが、設定上の都合や機器の台数の都合から、まだ、多くのデータを得るには至っていない。さらに、予定していた拒食様行動に関する実験については、当初の開始予定時期から変更するための調整中である。その他は概ね進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、自動計測装置を追加する予定であるので、データ取得のペースを上げることができると期待される。また、拒食様行動を生じさせる手法(利用する試薬等)の計画も一部見直し、当初の予定していた試薬との比較研究から、拒食様行動の脳基盤の研究についても進めていく。
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