本研究では、骨格筋特異的なPGC-1α過剰発現やFOXO-1過剰発現が動脈硬化進展に与える影響を、動脈硬化易発症モデルマウス「ApoE-KOマウス」や、ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVECs)を用いた実験系を用いて解明することに取り組んだ。 本年度は、エネルギー制限による動脈硬化進展の抑制機序を骨格筋FOXO-1に着目して明らかにすることとした。「ApoE-KOマウス」の骨格筋でFOXO-1を過剰発現させた「ApoE-KO/FOXO-1マウス」を作出して動脈硬化進展への影響を調べた。「ApoE-KO/FOXO-1マウス」では、「ApoE-KOマウス」に比して動脈硬化巣面積がおよそ65%減少していた。加えて「ApoE-KO/FOXO-1マウス」の動脈硬化巣ではVCAM-1とMac-2(マクロファージのマーカー)の動脈硬化巣中タンパク質発現量が有意に減少していた。血中リポタンパク質プロファイルは「ApoE-KO/FOXO-1」マウスで改善していなかった。 骨格筋特異的なFOXO-1過剰発現による動脈硬化進展の抑制機序を明らかにするために、骨格筋特異的なFOXO-1過剰発現マウス(「FOXO-1Tgマウス」)の血清をTNFαと共にHUVECsに添加し、動脈硬化進展に関連する遺伝子の発現量を測定した。野生型マウスの血清添加と比較してFOXO-1Tgマウスの血清添加では、HUVECsにおけるTNFα誘導的なVCAM-1、MCP-1の発現増加は抑制され、TNFα誘導的なeNOSの発現低下は改善されていた。以上より、骨格筋特異的なFOXO-1過剰発現は動脈硬化進展を抑制し、その機序として、FOXO-1依存的なマイオカインが血管内皮細胞における動脈硬化関連因子の遺伝子発現量を抑制する可能性が示唆された。
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