研究実績の概要 |
認知症対策は医療・介護において早急に取り組むべき課題とされ、適切なスクリーニングにより対象者を選定し、適切な介入を行うことが重要である。認知症のリスクの一つとして着目されている“motoric cognitive risk syndrome (MCR)”は、認知症ではないが“主観的な認知機能低下の訴え”と“歩行速度低下”を有している状態と定義され、認知症のリスクとして認識されている。MCRに関する疫学的な知見としては、メタアナリシスによる有病率において9.7%であったとの報告や(n=26,802)や予測妥当性の検討として認知症以外にも転倒リスク、生活機能障害リスクや死亡リスクとの関連性が示され、MCRの有用性が示されてきた。MCRは評価を簡便に行うことが出来るため、スクリーニングとしての有用性に期待がよせられているが、MCRがリスク評価として捉えているものが、どのような病変や生物学的変化を背景にゆうしているかについては未だ十分に明らかにされていない。そこで、本研究は、MCRが認知症リスクになりうるメカニズムを明らかにすることを目的とした。 本研究では、MCRをはじめとした認知機能や身体機能のデータに加え、脳画像指標と血液バイオマーカー等を統合したデータセットを作成し解析することを予定としており、本年度はデータセット作成のための検査等を実施した。また、アウトカム調査としての追跡調査を実施し、レセプト(国民健康保険・後期高齢者医療保険)等の解析に必要な情報を毎月収集し蓄積する計画で、問題なくデータ収集が行えた。
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