老化に伴う視床下部背内側核の機能が低下すると、入眠時の体温調節が破綻し、その結果、睡眠障害がもたらされる可能性を検討することである。高齢者に認められるなかなか寝付けないという入眠潜時の延長について、本課題ではマウスモデルを用い検討することで明らかにしようとしてきた。具体的には、強制的な覚醒を促すことで睡眠制限を行い、睡眠制限後に入眠するまでに要した時間を計測した。最終年度には、加齢マウス、背内側核特異的遺伝子改変マウス、食餌制限マウスにおける入眠潜時の変化について比較検討した結果、睡眠潜時の変化だけではなく、睡眠制限後に自由睡眠に戻した際の体温が老齢マウスで有意に高くなっていることを見出した。一方、食餌制限マウスでは睡眠制限後の体温が対照マウスよりも低いことが認められた。睡眠制限後の自由睡眠について詳しく調べてみると、マウスモデル間で睡眠の質的な変化が認められ、体温変化との相関関係が認められた。これらの結果から、入眠潜時の変化とともに認められる体温変化や睡眠制限後の自由睡眠時に認められる体温変化には、睡眠の調節機構の変化が関与していることが示唆された。
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