研究課題/領域番号 |
18H03188
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
冨樫 整 山形大学, 保健管理センター, 教授 (60192209)
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研究分担者 |
嘉山 孝正 山形大学, 医学部, 特任教授 (50142972)
山下 英俊 山形大学, 医学部, 教授 (90158163)
玉手 英利 山形大学, 理学部, 教授 (90163675)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 塩分ストレス / 糖尿病 / ゲノムコホート研究 / 遺伝環境相互作用 / ネットワーク解析 / 食餌嗜好 |
研究実績の概要 |
【研究目的】山形県コホート(29,300人規模)を対象として、塩分過剰摂取により糖尿病発症・進展に関わる遺伝環境相互作用を解明し、塩分ストレスによる糖尿病発症・進展に関わる危険因子群、防御因子群を特定し、疾病予防の確立や創薬への礎を築き、医学の発展に貢献することである。 【研究の実績】米沢市民(2,129人)を対象にして、スポット尿より1日塩分摂取量を推定した。推定1日塩分摂取量多寡別に3群に分けた。平均-0.5SD未満を低塩分摂取群(T1群:男性331人、女性363人)、平均-0.5SD以上から平均+0.5SD未満を中塩分摂取群(T2群:男性365人、女性485人)、平均+0.5SD以上群を高塩分摂取群(T3群:男性284人、女性301人)とした。男女とも、高血圧の有病率はT3群、T2群、T1群の順に高かった(トレンドp<0.001)。プロペンシティスコアマッチング法により交絡因子を除いても、高塩分摂取者(T3群)の糖尿病有病率は対象者(T1、T2群よりマッチ)に比べ有意に高かった。(p<0.01)男性のメタボリックシンドローム有病率は塩分摂取量増加に伴い高くなった。(トレンドp<0.001)男女とも、問診で得られた減塩意識は必ずしも塩分摂取量の低下につながらなかった。ネットワーク解析を行い塩分摂取に関わる食品摂取に違いがあるか調べた。ネットワーク分析は、T3群に比べT1群が複数の野菜を摂食する習慣を有することを示した。 【結論】塩分過剰摂取により、高血圧、糖尿病、高脂血症、メタボリック症候群の罹患率が上昇することを統計学的に明らかにした。塩分過剰摂取の原因としてみそ汁やご飯といった和食が挙げられる。複数の野菜を摂食する食事習慣は低塩分摂取群の特徴と考えられた。地域でのきめ細かな減塩指導と客観的減塩意識の涵養が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に実施されたデータ集積を継続している。山形県コホート研究における対象者の追跡調査として、二次調査、人口動態調査、特定健診、がん登録データ、脳卒中・心筋梗塞発症登録情報も適宜集積され、サーバー内に取り込みを行いデータ解析に資することが可能な状況である。データクリーニングも終了した。研究分担者間においては頻回な情報交換を行っており、研究の方向性の確かさを確認している。解析結果も得られ論文による成果報告もなされており、概ね順調な進捗状況であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
塩分ストレスによる糖尿病発症・進展に関わる危険因子群、防御因子群を明らかにするため以下の研究を予定している。 日本人において塩分ストレスが糖尿病発症・進展に関わることを未病状態から前向きコホート研究にて明らかにする。また塩分ストレスによる糖尿病発症・進展に関わる遺伝環境相互作用を明らかにする。さらに、塩分ストレスと異所性脂肪蓄積の表現型である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)発症・進展、更には肝外合併症に関わる環境要因、遺伝要因、遺伝子環境相互作用を解明する予定である。
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