研究課題/領域番号 |
18H03195
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
伊藤 圭祐 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (40580460)
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研究分担者 |
加藤 竜司 名古屋大学, 創薬科学研究科, 准教授 (50377884)
田中 瑞己 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (70803344)
河原崎 泰昌 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (80303585)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ペプチド輸送体 / 食品ペプチド |
研究実績の概要 |
ヒトが摂取した食品たんぱく質は、消化管での加水分解の後、ペプチドもしくはアミノ酸として小腸上皮細胞より吸収される。特にペプチドの吸収効率はアミノ酸よりも高く、窒素源の吸収実体として中心的な役割を果たしている。ヒトにおいて体内へのペプチド吸収を担う輸送体は、プロトン共役型オリゴペプチドペプチド輸送体(POT)ファミリーのhPEPT1、hPEPT2であり、8,400種類のジ・トリペプチドが、小腸ではhPEPT1を介して吸収され、腎臓ではhPEPT2を介して原尿中から再吸収される。膨大なバリエーションの基質群を認識するPOTの“基質多選択性”はペプチド栄養の根幹であるが、その詳細は未だ十分には解明されていない。本研究では、申請者らが開発したペプチド輸送体(POT)解析システムを基盤技術として、ヒト小腸での食品由来ペプチドの吸収を担うhPEPT1について、8,400種類のジ・トリペプチドの網羅的吸収特性解析を実施し、“基質多選択性”の全貌を解明する。2018年度にはPOT発現細胞を構築した。しかしその一方で我々が開発したPOT解析法は蛍光ペプチドの取り込みの競合阻害を原理とする間接的な輸送能評価系である。そこで2019年度は2018年度に化学合成によって調整したジ・トリペプチドを用いて各種真核生物由来POTの網羅的親和性解析を進めるとともに、実際にペプチドの輸送効率を調べるため、ジペプチドの網羅的解析法(ジペプチドミクス)を確立した。ジペプチド分析にはLC/MS/MSを用い、誘導体化した合成ジペプチドをサンプルとして網羅的な定量解析が可能なこと、また混合物サンプルを用いた場合でも成功裏に定量解析できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにPOT発現細胞、POT解析法、また実際の輸送を調べるためのジペプチドミクスの開発に至った。2018年度は実験試薬の調達の遅れが生じたものの、ここまでの段階で目標達成に必要な解析系や素材はほぼ揃ってきていることから、現時点での研究進捗状況としては概ね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では、ヒトを含めた真核生物POTのin silico親和性予測モデルの構築と、基質認識メカニズムの解析を進める。具体的には、ペプチド群のPOT親和性解析データを重回帰分析する際、ペプチド全体を一つの分子として捉え、“各空間座標における物理化学的因子(“OH基の数”や“logP値”等)の総和”をアルゴリズムとした、汎用性の高いin silico基質親和性予測モデルの構築を検討する。また基質認識メカニズムとして、POTへの結合配向についても解析する。
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