研究分担者 |
徳重 克年 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (60188729)
山本 雅一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (60220498)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
岡田 浩介 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (80757526)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究実績の概要 |
p62はautophagyの調節因子であり, さらに, 中性脂肪を遊離脂肪酸に分解代謝する新たな代謝経路lipophagyに関与する. p62遺伝子欠失マウスは,高脂肪食摂餌による脂肪負荷では, 高度線維化を伴う重症NASHを発症する.本研究では, 肝細胞, 脂肪細胞にのみp62を発現する“組織細胞特異的p62遺伝子rescueマウス”を作製して, 高脂肪食摂餌におけるNASH病態を比較解析することより, NASH発症・進展の過程におけるp62の役割を脂肪酸代謝と臓器連関の視点から解明した. p62-KOマウスに,60%高脂肪食(HFD)を16週間摂餌させ,生体試料の解析を行った.更に,p62ノックインマウスと組織特異的Creリコンビナーゼ発現マウスとの掛け合わせにより,肝細胞,脂肪細胞にのみそれぞれp62遺伝子を発現する“組織細胞特異的p62遺伝子レスキューマウス”を作製し,肝病態を比較した.野生型マウス肝では,HFD16週間で脂肪滴沈着とごく軽微な炎症と線維化を認めた.一方,p62-KOではHFD4週間から脂肪滴が出現し,8週間からは炎症細胞浸潤が認められ,16週間では高度の線維化を伴う脂肪性肝炎像を示した.p62-KO肝では強い肝障害と炎症・線維化シグナルの活性化が認められた.脂肪酸代謝では,FFAをacyl-CoAに代謝するAcsl1のmRNA発現が低下し,acyl-CoAをFFAに代謝するThem2の発現が増加しており,FFAとacyl-CoA代謝バランスの異常が示唆された.一方,脂肪細胞特異的p62レスキューマウスの肝では,p62-KOと比較して脂肪性肝炎の病勢に差が認められなかったが,肝細胞特異的p62レスキューマウスの肝では,線維化が顕著に抑制されていた.p62は肝細胞における脂肪酸代謝の修飾を介して,脂肪性肝炎の進展に対して防御的な役割を果たすと推測された.
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