研究課題
平日と休日の生活リズムに数時間のずれが生じ、平日の生活リズムと体内時計に不調和が起こった状態の「社会的時差ボケ」は、肥満や代謝異常のリスク因子の一つである。しかし、日本人において社会的時差ボケが肥満や代謝異常に及ぼす影響は不明であり、その解消法も確立されていない。本年度は、中高齢者における社会的時差ボケと肥満指標および糖脂質代謝マーカーとの関連を横断研究により検討した。中高齢男女1133名から得られた1週間の起床・就寝時刻の記録より、睡眠時間と睡眠中央時刻を求めた。社会的時差ボケは、通常休日と平日の睡眠中央時刻の差によって評価されるが、本研究の対象者には退職して仕事をしていない者も多く含まれていたため、1週間の睡眠中央時刻のばらつき(標準偏差)を求め、社会的時差ボケの評価指標とした。1週間の睡眠中央時刻の標準偏差が大きいほど睡眠中央時刻の日間変動が大きく、社会的時差ボケが大きくなる。肥満指標としてBMIと腹囲を、また、中性脂肪やグルコースなどの糖脂質代謝マーカーを測定し、1週間の睡眠中央時刻の標準偏差との関連を調べた。起床・就寝時刻の記録日数が5日以下の者やその他のデータに欠損値がある者を除外し、978名のデータを用いて解析を行った。睡眠時間、朝型・夜型得点およびその他の交絡因子(年齢、性別、運動習慣など)を調整変数とした重回帰分析の結果、1週間の睡眠中央時刻の標準偏差とBMIおよび腹囲との間に有意な正の関連が認められた。1週間の睡眠中央時刻の標準偏差と糖脂質代謝マーカーとの間に有意な関連は認められなかった。以上の結果より、中高齢者において社会的時差ボケは肥満指標と関連する可能性が示唆された。
3: やや遅れている
社会的時差ボケ、時計遺伝子発現リズムおよび代謝異常の関連を明らかにするための観察・介入研究を予定していたが、本年度中に着手できなかったため。
社会的時差ボケ、時計遺伝子発現リズムおよび代謝異常の関連を明らかにするための観察・介入研究を進める。また、時間栄養学的アプローチによる社会的時差ボケの是正を視野に入れ、食事時刻の平日・休日のズレやばらつきにより評価されるeating jet lagにも着目し、観察・介入研究を実施する。これらの研究を推進するため、研究補助者を雇用する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件)
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