研究課題
本年度は、一過性の社会的時差ボケが心血管代謝リスクに及ぼす因果関係を明らかにするため、クロスオーバー介入研究を行った。特に、心血管疾患の重要なリスク因子である動脈スティフネスと早朝の血圧上昇に着目して研究を行った。対象は14名の若年男性とした。介入開始前の1週間、ウェアラブルデバイス(Fitbit)を用いて普段の起床・就寝時刻および睡眠時間を調査した。対象者をランダムに社会的時差ボケ(SJL)条件とコントロール(CON)条件に振り分け、金曜日の午前中に中心動脈スティフネス(cfPWV)などの測定を実施した。また、事前に対象者に渡した24時間血圧計を用いて夜間から早朝の血圧を1時間おきに測定し、早朝の血圧上昇を評価した。その後、SJL条件の者は、金曜日の夜から日曜日の朝にかけて、普段の起床・就寝時刻より3時間遅い時刻に起床・就寝した。CON条件の者は、金曜日の夜から日曜日の朝にかけて、平日と同じ時刻に起床・就寝した。月曜日の午前中に再度各測定を行い、金曜日から月曜日にかけてのcfPWVおよび早朝の血圧上昇の変化をSJL条件とCON条件で比較した。その後、SJL条件とCON条件を入れ替え、同様の介入を行った。睡眠中央時刻(起床・就寝時刻の中央値)は、SJL条件において平均で2時間58分後退し、CON条件においては平均で13分後退した。睡眠時間に条件間で差は認めらなかった。CON条件では金曜日と月曜日のcfPWVに差は認めらなかったが、SJL条件では金曜日と比較して月曜日にcfPWVが増加した。また、CON条件では金曜日と月曜日で早朝血圧の変化量に差は認めらなかったが、SJL条件では金曜日と比較して月曜日における早朝血圧の変化量が大きかった。以上の結果より、一過性の社会的時差ボケは動脈スティフネスを高め、早朝の血圧上昇を亢進する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
14名を対象として介入研究を実施し、一過性の社会的時差ボケが動脈スティフネスおよび早朝の血圧上昇を亢進させるという知見を得られたため。
本年度の介入研究で動脈スティフネスと共に測定した動脈圧受容器反射感受性や自律神経指標の解析を行い、一過性の社会的時差ボケが動脈スティフネスや早朝の血圧上昇を亢進させるメカニズムを検討する。また、血中の糖脂質代謝指標や炎症指標などの解析を行い、一過性の社会的時差ボケが代謝異常に及ぼす影響を検討する。本年度の介入研究において、一過性の社会的時差ボケにより動脈スティフネスの上昇が認められなかった対象者は、身体活動量が高い傾向が認められた。そこで、来年度は身体活動に着目して、社会的時差ボケの是正策の提案に向けた介入研究を行う。具体的には、週末に身体活動量を増やすことにより、一過性の社会的時差ボケに伴う週明けの動脈スティフネスの増加や早朝の血圧上昇が抑制されるか否かを検討する。また、身体活動の実施時刻(朝もしくは夜)によってこれらの抑制効果が異なるか否かを検討する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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