研究課題/領域番号 |
18H03202
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山内 由紀子 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (10546518)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分散システム / 相互作用 / 匿名性 / 対称性 / 局所性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,計算主体間の相互作用が分散協調において果たす役割の解明である.従来の分散システムモデルで想定されていた計算機間のメッセージ通信だけではなく,ロボット群などのモバイル計算主体群モデルにおける移動や観測など,様々な相互作用を研究対象とすることで,単一の分散システムモデルでは発見できなかった分散協調の原理を系統的,効率的に発見することを目指し,(i) 計算主体の匿名性により生じる対称性と相互作用の関係の解明,(ii) 観測や移動による相互作用の局所性,並列性に対して,記憶が果たす役割の解明,(iii) 簡潔な分散アルゴリズムの実現に取り組む. 令和元年度は(ii),(iii) に関する結果を得た.三角形格子グラフ上を移動するプログラマブルな粒子群が構成する Amoebot モデルの分散協調能力の指標として,粒子群が自律的に構成可能な形状が重要と考えられている.本研究では,粒子群が形成可能な形状は初期配置の対称性に依存することを示した.この結果は,匿名(識別不能),無記憶(メモリなし),通信機能を持たないモバイルロボット群の形状形成能力と同様であり,Amoebot モデルを構成する匿名な粒子の持つメモリや通信機能が形状形成能力に差異をもたらさないことを意味する. 利己的な計算主体(プレイヤー)の集合が辺の追加や削除を行いながらネットワークを構成するネットワーク構成ゲームでは,従来,大域的な情報を獲得できるプレイヤーが想定されてきた.本研究では,大規模ネットワークを想定した局所性,つまり近傍のプレイヤーの情報のみを獲得できる状況に着目し,接続辺の交換のみを行う限定的なネットワーク構成ゲームにおける近傍の大きさと無秩序の代償,さらに収束性の関係を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は Amoebot モデルの形状形成におけるメモリと通信の影響,ネットワーク構成ゲームにおける近傍情報の収束性への影響などをすでに発表しているが,未発表の研究成果も多数あり,研究計画は概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の研究成果を迅速に発表するとともに,本研究の目的 (iii) 簡潔な分散アルゴリズムの実現に取り組む.特に,計算主体群の相互作用を制限した状況での簡潔なアルゴリズムの設計に取り組む.連続空間ではなく,二次元格子領域を移動するモジュールロボットやグラフ上を移動するロボット群,近傍での通信やセンシングのみを行えるモバイルロボット群,観測・計算・制御に誤差を持つモバイルロボット群などの分散協調に取り組む.
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備考 |
山内由紀子,分子ロボットと分散システム論, 分子ロボティクス概論,情報計算化学生物(CBI)学会出版,pp.56-58,2019年5月.
山内由紀子,分子ロボットシステムのための分散システム理論,計測と制御,Vol.58, No.4, pp.286-290, 2019年4月.
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