研究実績の概要 |
ナノ/マイクロ電気機械系 (N/MEMS) において, 自励振動のもとで注入同期を利用する有効性が現在注目されている. しかし, このような対象には従来の振動工学によっては解決困難な問題が多く存在する.本研究は, これまでの研究成果をもとに, これらの問題を解決し, 任意の連続体振動をデザイン可能にする「位相縮約振動工学」の構築を目指している. 当該年度においてわれわれは, 自励振動系のシミュレーション環境を整備しつつ, 必要となる基礎理論の構築に成功した. その内容は, 次の3点である. (i)N/MEMSとしてカンチレバーの自励振動系においては実験主導の傾向があり, 計算機シミュレーションは必須であるにもかかわらず, その整備が遅れていた. われわれはAbaqusとDymolaのソフトを連成することにより, このシミュレーションを可能とすることに成功した. (ii)注入同期系の解析手法として, 位相縮約という一種の近似理論が有効である. しかしながら, その近似は従来, 摂動の1次のオーダーに留まっていた. これに対し, われわれはその近似精度を任意のオーダーに向上させる技法を構築し, その有効性を確認することに成功し, これを特許出願した. 現在, その結果を一流論文誌に投稿予定である. (iii)カンチレバーの自励振動系において, 現実的制約条件のもとで, その形状を最適化し, 同期能力を最大化することは実用のみならず学術的にも大きな価値が存在している. われわれは, この問題を研究分担者(畔上)の最適形状理論を発展させることにより, 解決可能にすることに成功した. この成果を(i)のシミュレーションと連動させることにより, 現実的問題に適用可能となる見通しが得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載の通り, 研究の基盤となるシミュレーション環境が整備され, これと同時に基礎理論において2点のブレークスルーが達成されている. これに伴い, 既に1件の特許出願が行われ, 学会発表においても大きな反響が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として, シミュレーション環境の整備と基礎理論の構築を並行して継続する予定である. その最初のゴールとして, 最も簡素なセッティングでのカンチレバーの自励振動の最適形状を得ることを目指す. 次のステップとして, 段階的にシステムの複雑度を増して, 粘弾性体の自励振動も対象とする予定である. その結果として, 実験グループとの共働の可能性が開かれる.
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