研究課題/領域番号 |
18H03207
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
水田 正弘 北海道大学, 情報基盤センター, 教授 (70174026)
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研究分担者 |
清水 信夫 統計数理研究所, データ科学研究系, 助教 (00332130)
南 弘征 北海道大学, 情報基盤センター, 教授 (80261395)
松井 佑介 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (90761495)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SDA / コンセプト / データ統合 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の事項について研究を推進した。 (1)メタ解析において仮定するモデルを選択するための異質性の尺度として、QおよびI-squareがよく知られている。これらの値によって母数モデルまたは変量モデルの妥当性を評価することができる。しかし、研究成果ごとの「異質性」には様々な可能性がある。系統的な非線形関係が存在する場合と外れ値が存在する場合では、対処法が異なる。それらの異質性を同一に扱うのは不適切である。そこで、本年度は、異質性を単一の数値で表現するのではなく、シンボリック分布値データとして解析し、各研究成果を散布図などで表現する方法を提案した。 (2)効果変数が複数設定されている場合におけるメタ解析として、多変量メタ解析(Multivariate Meta-Analysis)が提唱されている。例えば、効果変数として「生存率」と「無病生存率」の2つを設定した場合、これらの値は独立ではない。そこで、それらの相関係数を考慮した手法が検討されている。これをシンボリックデータ解析の立場から解釈すると、構造を有する分布値データと扱うことができる可能性がある。そこで、新たな理論構築を目指した。 (3)典型的なメタ解析では、介入(Interventions、薬や治療法など)の有無またはプラセボや既存の治療法との比較が中心課題となっている。しかし、現実には、複数の介入方法が存在することが多い。そこで、複数の不完全な比較研究を用いて、全体の評価を実施するネットワークメタ解析(Network Meta-Analysis)が検討されている。そこでは、介入による効果の順序付けなどが問題となる。ネットワークメタ解析における発見的な手法、すなわち探索的ネットワークメタ解析を構築するために、シンボリックデータ解析のアプローチを適用する方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4本の学術論文を投稿・採録された。さらに、採録決定であるが、掲載号が決定していない論文もある。 国内外の学会において10件の発表ができた。残念ながら、招待講演が決定していながら、学会が中止になったケースが3件あった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究成果を基に、より発展的な研究を推進する。さらに、応用分野の検討と理論構築を目指す。具体的には、以下の事項について研究を実施する。 (1)サブグループ抽出(subgroup identification)の活用:多くの場合、特定の介入(治療など)に対して効果が大きい群と小さい群が存在する。属性に基づいて、それらの群を抽出することは、メタ解析において重要なテーマである。これについて研究を推進する。特に、計算アルゴリズムの開発を実施する。 (2)分布値データに対する次元縮小:データ解析一般において次元縮小は基本的な手法である。メタ解析においても、重要な技法である。これについて、分布値データに対するシンボリックPCAの適用が考えられる。さらに、非線形な特徴を見出すための次元縮小手法を検討する。 (3)応用に関する検討:医療を中心とした応用について検討する。放射線治療ではSDAの枠組みでの研究が有用であると思われる。ある医学的検査について本研究成果の適用を検討している。 (4)理論構築に関する検討:メタ解析およびSDAにおいては、統計学をはじめとした広範囲な分野からの検討が求められる。より一般的な理論構築を目指す。
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