研究課題/領域番号 |
18H03210
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
北川 源四郎 明治大学, 研究・知財戦略機構, 客員教授 (20000218)
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研究分担者 |
国友 直人 明治大学, 政治経済学部, 特任教授 (10153313)
中野 純司 統計数理研究所, モデリング研究系, 教授 (60136281)
姜 興起 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (70254662)
田野倉 葉子 明治大学, 先端数理科学研究科, 特任准教授 (60425832)
佐藤 整尚 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (60280525)
長尾 大道 東京大学, 地震研究所, 准教授 (80435833)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 季節調整法 / 多変量時系列 / 状態空間モデル / 統計ソフトウェア |
研究実績の概要 |
1年目の研究計画において主要な目標であった1変量季節調整法の改良に関しては,定常AR成分の安定的な推定を実現するための計算法の開発を行った。また、トレンドや季節成分に突然の構造変化がある場合にも自動的に対応できるモデルを考案し、関連する計算法の開発も行った.前者に関しては,定常AR成分と観測ノイズ成分の分離が難しいことが原因であることから,観測ノイズが白色雑音ではなくAR過程の場合にも適用可能な逐次フィルタを開発した.これによって,定常AR成分を持つ季節調整モデルが安定的に推定できるようになることを確認した.後者に関してはシステムノイズの分布を正規分布から混合ガウス分布に拡張することが有力であるが,混合ガウス分布を用いたモデリングを実用化するためには,カルマンフィルタを拡張したガウス和フィルタの実用化が不可欠である.本研究では,その実用化の鍵となる混合ガウス分布の成分数の縮減のための新しい基準とそれを計算し最適化する効率的なアルゴリズムを提案し,従来の方法を超える性能を持つことを確認した. 2年度の研究に向けて実施した多次元季節調整モデルの推定法に関する研究に関しては,多変量季節調整モデルの状態推定のための汎用的な計算法を開発した.これによって,今後の多変量モデルの研究開発を効率的に推進できる基盤ができた.また,開発した方法のソフトウェア実装に関しては1変量季節調整法に関するR関数の改良をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定常ARモデルを安定的に推定するための方法に関しては,計画通りARパラメータに制約を導入することによって安定化する方法の開発ができた.さらに、計画には含まれていなかったが、AR成分を状態変数に含めるのではなく、観測ノイズがAR過程に従うモデルを考え、そのような場合にも適用できるカルマンフィルタの拡張を行った結果、この方法も有力であることが分かった。 データに構造変化や異常値が含まれる場合に関しては,ガウス和フィルタ・平滑化の改良を行ったが,この過程で,より一般的な混合ガウス分布の項数縮減法に関する新しい方法を開発することができた.これは本課題が直接目標としたことを超える成果と考えている. 多変量化の研究については1年目は予備的研究と位置づけていたが,多変量季節調整モデリングのための汎用推定システムの開発は実現できた.また,一般パワー寄与率に関する研究についても様々な実データへの適用を進めるとともに,新しい方法の可能性の研究を行った. 開発した方法のソフト化に関しては主に3,4年目に実施することを想定していたが,1変量モデルに関しては先行してR関数の開発・改良を行った.一方,超高次元時系列の情報抽出の方法の開発に関しては具体的な成果は得られていない. 以上のように,予定以上の成果,前倒しで進んでいる研究開発が実現できた一方で,やや遅れている部分もあり,全体としてはおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
1変量季節調整法の改良に関しては前年度の研究結果に基づきさらに改良を加える。特に、前年度にガウス和フィルタの鍵となる成分縮減法について有力な方法が見つかったので、ノイズ分布に混合ガウス分布を仮定した季節調整法を確立し、突然の構造変化や異常値にも実用的な計算ができるようにする。 多変量季節調整法の研究・開発に関しては,多変量のトレンド間に相関や共和分の関係がある場合に有効なモデルの開発研究を行う。ベイズモデルや正則化の利用によって成分分離ができるような方法の開発,多変量季節調整法の定常成分のための実用的な推定を実現する方法の開発,多変量季節調整法で分離抽出した多変量定常成分について、変数間の因果関係を明らかにするための一般化パワー寄与率の改良などを行う。また,これらの方法を直接適用することが困難な、超高次元に時系列について、情報抽出を可能とする新しい方法の開発も目指す。 開発したモデリングの方法はRあるいはWebアプリケーションに実装し公開できるようにするとともに,実際の経済時系列や地球科学データに適用し、その有効性を確認するとともに問題点を抽出し、さらなるモデルや推定法の改良を行う。
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備考 |
researchmap 北川源四郎 https://researchmap.jp/g-kitagawa/
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