研究課題/領域番号 |
18H03223
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上田 和紀 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10257206)
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研究分担者 |
石井 大輔 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (00454025)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高水準モデリング言語 / グラフ書換え / ハイブリッドシステム / 制約プログラミング / 発展可能検証系 |
研究実績の概要 |
プログラミング言語技術との融合による高水準モデリング言語とその処理系の進化を目標に,グラフ構造を扱うLMNtalおよび実数を扱うHydLaの二つのモデリング言語について以下の研究開発を実施した.またそれらの一環として,研究基盤となる二つの言語処理系についてそれぞれ開発合宿を行い,LMNtalコンパイラおよび記号実行系HyLaGIの全面的な整備改良を行った.
グラフ書換え言語LMNtalについては,(i) 静的解析技術の一環としてのグラフの型概念を発展させ,グラフの型の表現力の解析を進めるとともに,関数のように振る舞うアトムの扱いを明らかにした.(ii) またこの型検査器の実装を行った.(iii) LMNtal仮想機械について,コンパイラの最適化機能をサポートする拡張を行った.(iv) 既存のモデル検査器の状態空間削減に効果のある自動抽象化技法の定式化と実装を行った.(v) グラフ書換えの表現力を強化する全称量化機能を仮想機械レベルでサポートした.
制約概念に基づくハイブリッドシステムモデリング言語HydLaについては,(i) 制約求解のスケーラビリティ向上を二つの異なる目標とアプローチで行った.(ii) 微分代数方程式の求解能力強化のために,求解エンジンへの計算機代数システムMapleの組込みを実験的に試行した.(iii) 制約階層の宣言的意味論の詳細検討を行い,意味論の改良を行った.(iv) 上記を含むHydLaおよびその記号実行系HyLaGIと対話環境webHydLaについて総合論文にまとめて刊行した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に掲げた諸項目を含むさまざまな要素技術について,個々に研究フェーズに差はあるものの,開拓と深化を進めることができた.この中で,LMNtalモデル検査器における状態空間管理方式の刷新については,予備性能評価の結果から作業量に見合う効果が得られない可能性が浮上したため,本年度は他の諸改良を優先させることとした.HydLaについては,いくつかの展開研究に先立ち,他の研究項目の理論基盤をなす意味論の整備を優先させることとした.
研究成果を集約したモデリング言語処理系については,2019年度も前年度と同様に,2回の開発合宿によって基盤整備を進めることができた.また,研究分担者との研究集会を北陸先端大で開催して,他の関連科研費プロジェクトとの交流を図ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
モデリング言語の研究開発における理論と実践の連携という基本方針に基づいて,ひきつづき各作業を推進する.軸をなす二つのモデリング言語は,研究基盤としての本格利用に堪える処理系の存在と実運用が言語設計の合理性と技術的安定性の証左となっているが,形式意味論についてもひきつづき改良の検討を進める.
LMNtalについては,これまでの研究開発から,プログラムの逆実行概念の重要性が複数の応用で浮上してきたため,それを可能にするための要素技術の検討を推進する.また,他の言語やツールとの関連付けを促進すべく,Colored Petri Net 等のモデリングツールとの関連付け,関数型言語との関連付け,実時間システムのモデリング技術の深化などを進める.HydLaについても,他の厳密シミュレーションツールとの比較評価を進める.
次年度はこれまでとは異なる在宅中心の研究開発となるが,研究協力者となる学生の力を結集した開発合宿の代替となる作業の場を設ける.
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