研究課題
生体認証には、「生体情報は生涯不変であり、任意に更新できない」という物理的性質に起因する、なりすましと追跡可能性の問題が存在する。本研究では、微細生体部位の利用というアプローチによって生体情報の「生涯不変であり、任意に更新できない」という物理的性質の壁を突破し、なりすましに関する問題(問題1)と追跡可能性に関する問題(問題2)を解決する生体認証技術「マイクロ生体認証」の確立を目指す。問題1の解決:一般に、模倣品をより細部まで作り込むにつれて、その製造にかかる手間が非常に高くなるが、(光の波長程度までのサイズの物体であれば)ズームレンズを使って対象物の細部を撮影することは、模造に比べはるかに容易である。この「撮影と偽造のコストの非対称性」を利用し、ある微細部位の生体情報を認証情報とすることによって、たとえその部位の情報が盗まれたとしても偽造に大きなコストを要する生体認証が実現される。問題2の解決:我々の身体は、指紋のパターンや骨格の形状などは比較的長期に渡って変化しないが、皮膚組織や骨組織のレベルでは新陳代謝によって日々入れ替わっている。このように、生体情報も、取り扱うサイズが微細になれば、その物理的様相が変わる。ユーザがある時点で生体情報を登録したとしても、生体部位が入れ替わる度に、その生体情報自体が消滅し、追跡可能性が分断されることになる。本研究では、拡大鏡によって撮影される微細「爪」画像、微細「皮膚」画像を用いた生体認証システムの設計・実装・評価と、利便性・安全性の強化を行った。既存のテンプレート保護技術(ビット列に符号化された生体情報を保護する技術)と本研究を融合し、物理的な生体情報と符号化された生体情報の両者を保護するIDレス生体認証を実現した。生体検知技術と本研究を融合し、マイクロ生体認証の安全性を維持しながら、利便性(低倍率撮像)の向上を達成した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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情報処理学会論文誌
巻: 63 ページ: 1804~1820
10.20729/00222734