研究課題/領域番号 |
18H03240
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
櫻井 幸一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (60264066)
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研究分担者 |
SU Chunhua 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (40716966)
穴田 啓晃 長崎県立大学, 情報システム学部, 教授 (40727202)
馮 尭楷 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (60363389)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 仮想通貨 / 暗号資産 / 分散計算 / セキュリティ / プライバシー / 暗号プロトコル / ビットコイン / ブロックチェーン |
研究実績の概要 |
ビットコインは国内でも合法化され、続くイサリウムなどの暗号仮想通貨群は、国内外で現在1 0 0 0種類をこえ、さらに増殖の勢いにある。金融サービスを中心に、仮想通貨の利便性は宣伝され、投資される資産も肥大化している。しかし、それらの安全性を客観的に評価する議論は、未だ少ない現状である。多くの仮想通貨では、暗号論的ハッシュ関数や公開鍵電子署名が利用されている。それら暗号アルゴリズム単体での安全性は、これまでも学術的に研究され評価できている。これに対し、通貨利用プロトコルの信頼性や応用サービスのプライバシーの解析は、海外を中心にやっと始まったところであり、明らかに十分ではない現状にある。 本研究では、ビットコインやその亜種、ブロックチェーンなど暗号アルゴズムを利用した仮想通貨や契約サービスシステムの寿命を、アルゴリズムの危殆化を基準に評価する。また、匿名性と個人情報の関連結性も、分散計算プロトコルの解析に基づき、理論的に評価する。さらに、基盤アルゴリズムやプトロコルの修正による、安全性や匿名性の強化も研究する。 本年度は、調査研究の国内研究会での発表、実験解析結果の国際会議での発表、ACM系会議での仮想通貨に関する国際ワークショップの開催、ブロックチェーン応用に関するIEEE系国際会議の立ち上げを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1) 現在最も普及している暗号通貨Bitcoinにおける、計算困難問題のインスタンスの解を競争的に探索するステップである"マイニング"に対し、その統計的性質を解析した。マイニングに要する時間は、その期待値が一定になるよう運用で調節される一方、分散については、その値が大きいと問題が生じる可能性が指摘されている。我々は、マイニング時間の分散について考察した結果、Bitcoin のケースでは時間の分布が指数分布となること、従って、時間の期待値を固定する限り分散も固定されてしまう事実を確認した。次いで, Tromp (BITCOIN 2015)やBag-Ruj-Sakurai(研究代表者)(Inscrypt 2015)らの先行研究で提案された"グラフクリーク・マイニング"に着目した。クリークサイズが2のとき、グラーフクリーク・マイニングはBitcoinのマイニングと捉えられる。上記の先行研究では、クリークサイズをパラメータ化し大きくすると、期待値を固定しても分散がBitcoinとは異なる値となることが主張されている。しかしながら、定性的な評価は与えられていない。本研究では、小規模な実験ではあるが分散の値が定量的に小さくなる傾向を確認した。これにより,マイニングの時間の分散を制御できる可能性があるとの見通しを得た。 (2) インド・コルカタで、西ベンガル州政府主催のGLOBAL BLOCKCHAIN CONGRESSに招かれて、基調講演Security, Privacy and Trust of Blockchainを行い、インドをはじめ、欧州・南米のブルックチェーンに関する産学官の技術者・研究者と交流できた。 (3) これまで主催指摘たACM系のスマート契約ワークショップに加えて、IEEE系国際会議(中国・広州)のワークショップでもブロックチェーン応用を主題にした会議を発足させた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)現在までに得られたマイニング時間の分散に関する結果で、計算機による小規模実験のものは、理論的な解析を行い、定性的な成果を目指す。 (2)プライバシーを強化した新たな仮想通貨もまだ登場し、既存の仮想通貨に関しても、安全性や匿名性に関する脆弱性は指摘され、発表されている。継続した動向調査と、学術的観点からの解析を行う。IoT向きの仮想通貨など、新たな社会基盤やサービスをうたった仮想通貨の調査と分類をすすめる。 (3) Blockchain技術とデータベース技術との融合について引き続きの動向調査に加えて、新たな応用も検討する。 ブロックチェーンはサプライチェーンなど幅広く応用されているが、 多くの応用では処理されるレコードが多く、オリジナルのブロックチェーン技術ではスケーラビリティが足りないというがある。 既に成熟したデータベースの技術と融合してスケーラブルなブロックチェーンデータベースの研究をすすめる。 (4)ACMやIEEEなど学会を中心とした、仮想通貨の国際会議を通じての、研究グループの活性化を進める。
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