研究課題/領域番号 |
18H03241
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
桑門 秀典 関西大学, 総合情報学部, 教授 (30283914)
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研究分担者 |
堀井 康史 関西大学, 総合情報学部, 教授 (00268335)
小林 孝史 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (90268334)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 物理的複製不可能関数 / PUF / 負性インピーダンス変換器 / fuzzy extractor / センサ / プログラマブルアナログ回路 |
研究実績の概要 |
(a) アナログICの回路ブロックを用いたPUFの開発:前年度に,プログラマブルアナログIC内にあるオペアンプとコンパレータの個数が少ないために,識別に利用できる情報量が少ないことが問題になっていた.そこで,アナログICの回路ブロックのコンパレータに着目した.コンパレータの製造時に生じる動作のばらつきとして,駆動電圧の変動による出力値の変動を識別情報としてPUFに利用することを検討した.その結果,駆動電圧の変化を利用すれば,コンパレータの数を増やすことなく,識別に利用できる情報量を増加することができる見込みを得た.また,製品により近い例としてUSB接続の電圧電流変化における特徴量の検討に着手した. (b) 認証プロトコルの低計算資源化:認証プロトコルの低計算資源化のために,RAMのサイズを小さくすることを目指している.fuzzy extractorの前処理として,アナログ情報を利用することを検討した.これは,前述(a)の実験結果により,アナログ情報を取得できる見込みを得たからである.アナログ情報を利用すれば,fuzzy extractorで利用する誤り訂正符号の能力をさらに有効に使えるが,RAMサイズを大きくする可能性がある.また,fuzzy extractorのバイアス攻撃への耐性の理論的検証に着手した. (c) アナログフロントエンド回路:アナログフロントエンド回路がすでに組み込まれている機器内のセンサ単体からの高精度の測定データを取得するために,データ収集ソフトウェアの改良を行った.本改良により,加速度センサを非接触で動作させることができるようになった.外部からの振動伝達を防ぐための防振台と併用することで,物理的な振動による雑音を除去できたので,データを収集し,有望な特徴量を特定するための解析を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の理論的検討と実験を踏まえて,注力する課題を絞ることができた.2019年度末に学会等の開催が見送りになったため,外部発表の機会を逸した.アナログICのコンパレータの駆動電圧の変化に着目できたことは,限定された素子数で識別に利用できる情報量を増加するために有望な方法であり,検討を進める価値がある.fuzzy extractorのバイアス攻撃への耐性強化のために,量子暗号の秘匿増幅を利用することを検討した.バイアス攻撃への強化策を施したfuzzy extractorの省RAM化を進める.測定時に生じる物理的な振動による雑音を除去することにより,センサの特徴量を高精度に取得できるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
低計算資源で実現できるセンサ機器認証技術を創出するために,本年度は以下の三項目(a)(b)(c)について取り組む.研究期間中,最新の研究動向を把握するために学会等で資料収集を行い,研究進捗に応じて,研究成果を学会等で発表する. (a)アナログICの回路ブロックを用いたPUFの開発:前年度,前々の研究により,素子数が少ないプログラマブルアナログICでは,識別可能な個体数に制限が生じることが判明した.オペアンプやコンパレータ等のアナログ素子を利用したPUFを実現するために,駆動電圧制御による特徴量抽出と特徴量の再現性を調査する. (b)センサ回路の個体識別技術:スマートフォンに内蔵されたセンサで機器を個体識別をするため,外乱となる物理的振動を除去した測定方法による特徴量の特定とその評価を行う. (c)認証プロトコルの低計算資源化:認証プロトコルの低計算資源化のために,RAMのサイズを小さくすることを目指す.省RAMなfuzzy extractorを実現するために,機械学習による前処理を検討する.機械学習による前処理とバイアス攻撃への強化策の二つを施したfuzzy extractorの省RAM化を進める.そして,上記(a), (b)で収集した特徴量のデータに適用し,有効性を評価する.
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