ヘッドマウントディスプレイなどの広視角の表示装置は、VR空間や遠隔地の表示において没入感を向上させ、コミュニケーションや操作における質の向上に寄与すると考えられるが、人間の視野は中心視と周辺視ではその特性が異なり、周辺視では詳細な知覚は行えないことが知られている。しかし知覚能力が視角偏心度の増大に従ってどのように低下するかの計測報告は十分になく、特に周辺視野への画像表示という応用に利用可能な計測が存在しなかったため、本研究では4名の被験者の片目の視野の耳側、鼻側、上側、下側の各方向について、最大で偏心角度84度までの輝度コントラストしきい値を測定した。また、4方向の偏心方向の測定データから各方位のコントラスト感度関数を作成し、それらを使った任意方位の補完した視野全域のコントラスト感度関数を作成する手法を提案した。 2023年度は偏心度方位、偏心角、周波数を引数とするコントラスト感度関数 Contrast Sensitivity Function(CSF)をグラフ化し、高偏心度の計測結果を用いることができていなかった従来のコントラスト感度関数モデルでは高偏心度でしきい値を測定値より高く見積もる傾向があることを報告した。 また昨年度より継続して行ってきた偏心度方位、偏心角、周波数を引数とするコントラスト感度関数に基いたコントラスト知覚像を生成する分解周波数画像別閾値処理型画像フィルタの改善とそのフィルタ特性の評価実験を行った。評価実験はフィルタリングにより生成した画像と原価像との判別可能性を調べる被験者実験により実施し、視覚的情報量を削減しつつも画像の変化を知覚し難いというコントラスト知覚像として良好な結果を得た。
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