研究課題/領域番号 |
18H03249
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中島 浩 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (10243057)
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研究分担者 |
岩下 武史 北海道大学, 情報基盤センター, 教授 (30324685)
深沢 圭一郎 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (50377868)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 規則化 / SIMDベクトル演算 / データ構造変換 |
研究実績の概要 |
本年度は、(1) 一般に線形リスト等で表現される物体・粒子集合と、(2) 一般にCRS形式等で表現される疎行列を対象に、これら規則性に乏しいデータを適切に表現する規則性の高い構造に変換することと、規則化された構造に対する効率的な操作方法について、以下のアルゴリズム設計を実施した。 (1) 動的に要素が変動する多数の物体・粒子集合を、集合内の要素が連続配置され集合間にギャップが挿入されている一次元配列で表現する方式について、以下のアルゴリズムを設計した。(a) メタ情報により定まる固定的な最小ギャップサイズ、および個々の集合についてオーバーフロー生起時の要素数と割り当てられた配列要素数に基づく、集合の過去の増減傾向も加味した集合間ギャップの動的な増減量の設定。(b) ギャップ量の変更に伴う要素の配列内移動のための、スレッド当たり10~100KB程度の作業領域のみを必要とする、並列性・局所性に優れたin-place型のシフトアルゴリズム。(c) 部分的な集合肥大化の際にギャップ調整と配列内要素移動が頻発することを避けるために、オーバーフロー要素だけを別途保持する並列更新可能なバッファ。 (2) 四面体メッシュなどで表現される非構造格子から導かれる行列が、長いk対角要素列を多数含むようにオーダリングする方法について、3次元非構造メッシュの物理情報(空間情報)を援用した以下のアルゴリズムを設計した。(a) 2次元平面に重なりなく投影可能な多角形の連結集合(疑似平面)の中で、基準となるものを求めるアルゴリズム。(b) 基準疑似平面を出発点とし、メッシュを疑似平面の集合に分割するアルゴリズム。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 物体・粒子集合の本年度の各検討項目について、「研究実績の概要」に記載の通り具体的なアルゴリズム等を設計し、プロトタイプの実装と予備評価も実施した。したがって本研究課題については、計画を上回る進捗と自己評価している。 (2) 疎行列については、「研究実績の概要」に記載した2つのアルゴリズム設計を行ったが、プロトタイプ実装の過程で疑似平面の決定条件に不備があることが判明した。不備を解消する方策自体は検討を完了しており、改良アルゴリズムの予備性能評価のためのプロトタイプ実装を進めている。また最終的なオーダリングを、各疑似平面内および隣接疑似平面間の接続関係で定めることとしているため、オーダリング・アルゴリズム全体の設計は途上となっている。したがって本研究課題については、計画をやや下回る進捗と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は以下の研究を実施し、最終年度の研究を計画通りに着手できるようにする。 (1) 物体・粒子集合については、当初の研究計画に沿って本年度に設計したアルゴリズムの実装と評価を実施する。また併せて、ベクトル長を単位とした部分集合の線形リストを用いる手法との比較検討も行う。 (2) 疎行列については、疑似平面集合を決定するアルゴリズムのプロトタイプ実装と適用実験を早急に行い、続いて各疑似平面内および隣接疑似平面間の接続関係に基づくオーダリングのプロトタイプ実装を行う。これらのプロトタイプ実装で、計算性能やオーダリング品質に問題が生じなければ、本格的な実装と評価を行う。
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