研究課題/領域番号 |
18H03252
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小山田 耕二 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (00305294)
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研究分担者 |
小西 克巳 法政大学, 情報科学部, 教授 (20339138)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 視覚的分析 / 偏微分方程式 / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
本年度、正則化回帰を適用して、本質的な偏微分項を絞り、効果的に偏微分方程式の導出する手法を開発した。具体的には、時系列データが定義される離散点毎に、できるだけ多くの偏微分項から構成される線形偏微分方程式として、時間偏微分項を表現した。 本研究では、疑似計測データを使って、もとの偏微分方程式の偏微分項を含む複数の偏微分 項を計算し、変数削減を使った重回帰や正則化回帰を適用し、各偏微分項に対する係数を計算する。変数削減には、各係数に対するP値を閾値として、そして、正則化には、一般的なLpノルム正則化を用いる。非ゼロの係数に対する偏微分項がもとの偏微分項を含んでいるかどうかを確認する。
回帰分析を適用して,本質的な偏微分項を絞ることができるかどうかを確認するために。一次元の反応拡散方程式,バーガース方程式,KdV 方程式に関して導出実験を行った。空間領域における時系列測定から偏微分方程式を導出するために,境界条件や初期条件を変えることで,4種類のデータをそれぞれの偏微分方程式について生成し,これを疑似時計測データとした.そのデータから,最大 500 タイムステップ分の時系列データを取り出して,それに対して回帰分析を適用することにより,その有効性を検証した.
偏微分項データは,疑似計測データを用いて基本的には差分法で計算した.ここで,三階偏微分項と四階偏微分項に関しては,差分法での導出の際の誤差があまりにも大きいと考えられるために,三次スプライン補間を用いて偏微分項を導出した.この結果、正則化回帰よりも変数削減法を使った重回帰の方が導出精度が高いこと、そして、多様な初期条件・境界条件で計算された結果を使い、条件の網羅性を高めると、偏微分方程式の導出におけるノイズ耐性が大きくなることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時には、仮説「正則化回帰を適用すれば、重要な偏微分項を絞ることができ、効果的な偏微分方程式の導出を可能にする。」を検証するための計画を記載していた。この仮説を検証するために、時系列データが定義される離散点毎に、できるだけ多くの偏微分項から構成される線形システムとして、時間偏微分項を表現する。解析解または数値解の存在する偏微分方程式において、時空間であらかじめ求解しておき、もとの偏微分方程式の偏微分項を含む複数の偏微分項を計算し、正則化回帰を適用し、各偏微分項に対する係数を計算する。非ゼロの係数に対する偏微分項がもとの偏微分項を含んでいるかどうかを確認することができた。また、変数削減法を使った重回帰分析の適用も行い、両者の比較も行うことができたからである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、仮説「収束的交差写像法を適用すれば、時間偏微分に影響を及ぼす偏微分項を選択することができ、効果的に偏微分方程式の導出を可能にする。」を検証するための実験を行う予定である。今年度中には、偏微分項の各ペアに対して、時系列データが定義される離散点毎に因果関係を評価し、その強度をスカラデータとして可視化し、因果強度の空間分布を俯瞰的に理解することを期待する。
具体的には、解析解または数値解の存在する偏微分方程式において、時空間であらかじめ求解しておき、もとの偏微分方程式の偏微分項を含む複数の偏微分項ペアに対する複数スカラデータを俯瞰可視化し、もとの偏微分項を選択できるかどうかを確認する。具体的には、複数の偏微分項ペアに対する因果強度スカラデータに対して個別の色付けを行い、俯瞰的可視化手法としてボリュームレンダリング手法を用いて、複数スカラデータの融合的可視化を行う。具体的には、ある偏微分項に対しては、同一の色相で、その値に対して、彩度・値を変化させるような色付けを行う。また、不透明度については、スカラデータの値が不透明度と正の相関を持つように変化させる。また、可視化手法を半透明等値面表示に変更したときと比較を行い、ボリュームレンダリング法の優位性を確認する。さらに、数値解法で利用した格子の解像度がどの程度、偏微分項の特定に影響するかを評価する予定である。
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