圧縮センシングに基づく符号化高解像度イメージングについて,これまで基礎実証及び光学的分解能制限への対処について取り組んできた.それぞれに成果が得られた一方で,当初の目標であるギガピクセル規模への解像度向上を考えた場合,当初の原理では効果に限界があり困難であることが課題であった.この問題の解決のため,今年度はより効果的なスパース拘束を適用,及び符号化光学系の拡張による性能改善に取り組んだ.計測対象物体そのものに対する,全変動などを用いたスパース拘束は,自然物体がターゲットである場合には有効性が低い.今年度の研究では,深さ計測可能なカメラを想定し,計測対象の深度マップにスパース拘束を適用する圧縮センシング超解像法を開発した.物体空間では一般的に空間輝度分布よりも空間深度マップの方が滑らかな構造を有していることが多い.そのため,深度マップへの全変動拘束の適用,及びそれを用いた超解像画像再構成アルゴリズムを設計し,シミュレーションにてその効果を確認した.さらに,符号化過程においても,より圧縮センシングにおいて良条件な系を実装するために,符号化開口を多段化する光学設計法を開発した.これにより,圧縮センシングへの条件の良さの尺度であるコヒーレンス値,及び画像再構成精度の観点から,超解像イメージングの性能改善をシミュレーションにて確認した.設計した手法の定量的な検証が完了したが,これらの実機及び実イメージングへの適用が今後の課題である.
|