従来のコンピュータビジョンの研究は,定常的な2次元画像を入力とすることを前提として進化してきた.しかしながら,定常的な画像は,カメラという計測デバイスの制約によるものにすぎず,シーンの認識・理解に最適なわけではない.本研究では,光の軌跡さえ可視化可能なピコ~ナノ秒単位の超高速な光の過渡応答に基づく画像理解である「時間相関ビジョン」の枠組みを提案し,新しいコンピュータビジョンの潮流を開拓することを目的とする.光の過渡応答は,物体の物性や形状,内部状態などの情報と密接に関連しているため,シーン理解の強力な手助けになる.これまでの解法の多くが,時間方向の情報が縮退した画像をスタートとしていたため,限られた情報からシーンを解析せざるを得なかったのに対して,本研究は,光の時間的な応答をもとに問題を解決しようという,従来のシーン理解とは異なる角度からのアプローチであり,独創的なアイデアの提案である。 研究期間全体を通して、時空間計測デバイスの構築および評価、ナノ秒時間相関画像を用いた3次元形状計測、材質推定、コンピューテーショナルフォトグラフィなどの応用を検討することができ、大きな成果を得ることができた。
|