昨年度から研究を開始した,実行時間を削減したMBB(Maximum Bayes Boundary-ness)法の改良版について,それが,認識データが持つ究極の最適状態である「ベイズ誤り」をもたらし得るものであることを,実験により明らかにすることができた.この実験結果は,発表した国際会議においてBest Presentation Awardを受賞することができた.なお,本手法には,認識結果を左右するいくつかのパラメータが存在するが,少なくとも実験により,手法そのものの最適性が十分に示されたものと考えている. これまで固定次元のパターン認識のみに適用してきたこのMBB法を,音声信号のような可変長パターンの認識に適用することも行った.この適用によって,MBB法の適用範囲が拡大することが期待できる. さらに,昨年度から開始した,子供の音声を用いた音声認識の実験において,CS-ACELP(Conjugate Structue-Algebraic Code Excited Linear Prediction)法によって計算した線スペクトル対(LSP:Line Spectral Pairs)を観察し,大人音声と比べて子供音声の第1番目および第2番目のLSP周波数が高くなっていることを定量的に明らかにした.この成果もまた,国際会議において発表することができた.今後は,得られた成果を基に,子供の音声を高精度に認識する手法の構築が望まれる. また,より実際的な環境における音声認識を想定し,雑音環境下における音声強調がもたらす音声認識の劣化要因を分析することもできた.さらに,名古屋市立大学において音声認識の試みも行うことができた.今年度は本研究プロジェクトの最終年度に当たるが,上記のように,プロジェクトの目的をほぼ達成し得たものと考えている.
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