(A)新たな特徴量を高精度・高信頼に計測可能な手首装着型デバイスの信頼性向上:力の入れ具合に起因する手首凹凸変化は,先行研究で認識対象としてきた手指の動きや手首の屈曲と比較してレンジが広く,また変化する箇所も多岐に渡ると考えられていた.そこで新たに設計した特徴量を高精度・高信頼に計測可能な手首装着型デバイスの開発に取り組んだ.これにより,次の認識ステップで用いる特徴量の精度が向上するだけでなく,大きな力を加えた状態での繰り返しの実験が可能となる基盤を整えることができた.
(B)手形状および力の入れ具合の同時認識器の構築:手首凹凸特徴量を用いて手形状と力の入れ具合を同時認識可能な認識器の実現に取り組んだ.まずは力の入れ具合の情報を3段階程度のクラスに分け,その3クラスを認識可能なSupport Vector Machineの構築から着手し問題の難しさの定量化に取り組んだ.その結果,力の認識は3段階以上の解像度で認識可能なことを明らかにした.そこで,力の入れ具合を連続量として取り扱った場合の認識器の構築に取り組んだ.なお今回は研究代表者らの経験に基づき選定された特徴量ベースの線形認識器を用いた.これにより手首凹凸を計測し適切に認識器を構成することで,手形状のみならず力の入れ具合まで認識できることを明らかにした.一方で,手形状と力の入れ具合の同時認識は,特徴量における相互影響が非常に大きく,今回取り組んだ認識器の構成では実現が難しいことが分かった.また近年流行となっている畳み込みニューラルネットワークも比較対象として利用可能な状態とするために新たな高速計算機を導入し本認識問題がどのような特性を持つ問題なのかを明らかにすることにも着手した.この取り組みの結果,畳み込みニューラルネットワークを用いて認識精度の高い認識器を構築するためには一定以上のノウハウが必要なことが分かった.
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