感情増幅発話とは対話ロボットとユーザが共有する空間においてユーザが喚起するであろう感情を,対話ロボットがリアルタイムに推定し,ロボットがユーザに対し共感を示す振る舞いを実行する機能と定義する。人が持つ感情には怒り,悲しみ,恐怖,興奮など様々あるが,TV 視聴時にはそれらを喚起する雰囲気が存在すると考えられる。雰囲気には例えば,スポーツ中継などの視聴時に発生すると考えられるネガティブおよびポジティブな感情をともに含んだ盛り上がり(高活性)やバラエティ番組などで見られる笑いが上げられる。今回はユーザ自身の持つ情報以外の情報として,TV雑談システムにて収集されるSNS コメントという一般大衆の意見を用いた。実験では、TV 番組の盛り上がり場面および笑いの場面において,SNS 上の TV 番組に関連するコメント情報を用いた感情増幅発話機能の開発および評価を行った。感情増幅発話を TV 雑談ロボットに適用した際,ユーザがロボットから受ける印象の差を主観評価により比較した。結果,盛り上がり・笑いの両条件において,感情増幅発話をロボットに適用した場合,非適用時に比べユーザが雰囲気に対して変化する情動にロボットが追従し,ユーザから共感を得られる可能性が示唆された。盛り上がり表現の評価においては,感情増幅発話非適用時よりも,適用した際のロボットの方が,ユーザが受ける盛り上がりの印象を強めることがわかった。一方でロボットが実体を持つことにより,ユーザがロボットに対して持つ期待値が上昇する可能性が示唆された。感情増幅発話を評価する際は,ロボットのアピアランスや声質を事前にユーザの好みにあったものに変更可能な状態に設定する枠組みの必要性も示された。
|