研究課題/領域番号 |
18H03277
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
高橋 秀也 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (30197165)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 網膜投影ディスプレイ / 超多眼表示 / ヘッドマウントディスプレイ / 3次元ディスプレイ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、両眼の輻輳と水晶体の調節に矛盾を生じない自然な拡張現実感3次元表示が可能な2眼ステレオ超多眼方式網膜投影型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を開発し、これを用いた効果的な拡張現実感インタフェースの手法を確立することである。 本研究では、超多眼方式のシースルー網膜投影型HMDを用いた2眼ステレオ方式超多眼HMDの開発を行うが、基本構成要素である単眼の超多眼方式のシースルー網膜投影型HMDの画質を向上させる必要がある。これまでに我々が開発した超多眼方式のシースルー網膜投影型HMDでは、提示したい3D映像を構成するための複数の視差画像をHMDの眼鏡レンズ部分に位置するホログラフィック光学素子(HOE)上に空間分割多重表示し、これらを瞳孔上で約1~2mm間隔で異なる収束点に集光させた後、網膜上に投影することにより超多眼状態を実現していたが、表示に用いる複数の視差画像を空間分割多重表示していたため、HMDによって提示される3D画像の画質が劣化するという問題があった。この問題を克服するために、2018年度は3D表示に用いる複数の視差画像を網膜上へ時分割多重投影表示を行うことによって視差画像の画質を劣化させずに、高画質の3D表示が可能な超多眼状態を実現する単眼の表示システムを試作し、その有効性を確認した。具体的には、瞳孔上に約1~2mm間隔で3~5枚の視差画像を収束させる多重収束点を実現する多重露光HOEの作製手法の確立と、3~5枚の視差画像を時分割多重投影する映像投影システムを試作を行い、多重露光HOEと時分割多重映像投影システムを組み合わせた単眼の時分割多重投影方式の超多眼3Dディスプレイの原理確認を光学定盤上で行い、その有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の視差画像の網膜上への時分割多重投影によって超多眼状態を実現する網膜投影型ディスプレイを構成するために、複数の収束点を持つホログラフィック光学素子(HOE)の作製手法の確立と、網膜上へ複数の視差画像を時分割投影する手法の確立を行い、解像度の劣化がない3D画像表示が可能であることを確認した。 提案方式では、超多眼状態によって誘導される水晶体の調節作用を利用して単眼の3D表示を行っているが、これを観察者が観察する画像から説明すると、観察者の眼の水晶体のピント調節が仮想映像の提示距離に合うと合焦画像が観察でき、ピント調節が狂うとぼけ画像を観察することになる。つまり、超多眼状態を実現する視差画像の多重投影画像が、画像のぼけと同等の効果を表現できる必要がある。これを実現するために、視差画像の多重投影画像と画像のぼけの関係を理論的に明らかにし、試作した単眼の時分割多重投影方式の超多眼3Dディスプレイによって、画像のぼけを表現する手法の有効性を確認した。 以上により、2018年度の当初の目標は、ほぼ達成できたと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
1.超多眼3Dディスプレイでは、超多眼状態によって誘導される水晶体の調節作用を利用して単眼の3D表示を行っているが、より自然な調節作用を誘導するためには、超多眼状態を実現する視差画像の枚数を増やす必要があり、時分割多重投影光学系の改良を検討する必要がある。2019年度は、より自然に水晶体の調節作用を誘導できる超多眼状態の実現を目指し、網膜上へ時分割多重投影表示を行う視差画像の数を増やすために、時分割投影用の映像表示デバイスとシャッターを改良する。具体的には、収束点数は5~6個、1~2mm間隔を目指す。 2.より自然な画像のぼけを表現可能とするために、複数の視差画像の網膜上への多重投影状態と水晶体の調節作用の関係を検討する。 3.単眼の超多眼HMDを2つ組み合わせてステレオ方式のHMDを構成した場合の、輻輳が網膜投影像へ与える影響を検討するとともに、2018年度に引き続き水晶体の調節と両眼の輻輳を満足する3D仮想映像表示を行うための投影画像の作成方法の検討も行う。
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