2020年度は,2019年度に取り組んだ偏光を用いたディスプレイ反射像の抽出技術を改良し,両眼の角膜表面上からディスプレイの反射像を抽出した.ディスプレイ反射像の四隅を検出することで,両眼に対してCross-Ratio methodを適用することが可能となり,拘束条件が増えることから,注視点の推定精度が向上した.また,従来手法では角膜上の基準点は,LEDの数や位置に依存していたが,偏光を用いた場合には,ディスプレイの反射領域が検出される.そのため,基準点を四隅に限定する必要はなく,ディスプレイ反射像のエッジから複数の特徴点を検出することができ,注視点推定が安定する.具体的には,モデルベース手法の一つを採用することで角膜球中心位置を求め,視軸とディスプレイ平面の交点から注視点を推定した.モデルベースではCross-Ratio methodと異なり,ディスプレイとカメラの位置関係を求めるハードウェアキャリブレーションが必要であるが,近赤外光源をディスプレイの周りに設置する必要がない利点がある.さらに,近赤外LEDを用いた一般的な視線計測技術にも偏光情報が適用可能であることを示すため,偏光近赤外光の照射を提案した.視線計測では一般に近赤外線の照射を行うが,高度な計測になる程,複数の光源を用いるため,光源の識別が重要である.これに対して, 偏光フィルタを近赤外LEDの前に設置し,偏光情報を付加した近赤外線を照射することで,グリントの偏光角度からLEDの識別が容易となることを確認した.
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