研究課題/領域番号 |
18H03283
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
雨宮 智浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70396175)
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研究分担者 |
池井 寧 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (00202870)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 身体近傍空間 / 歩行感覚 / 体性感覚 / VR |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,感覚間相互作用により身体感覚を変調させ,実際の身体運動で生じる感覚情報との利得調整を行うことで,身体の物理的な空間移動や筋への運動指令を全く用いることなく,錯覚的に擬似的な身体移動体験を創出する手法の確立と適用限界の検証,そしてそのための客観的指標の提案と有効性の検証である.具体的には,以下の3つを具体的な課題としている. (課題1) 錯覚的に擬似的な身体移動体験を創出する手法の確立と適用限界の検証 (課題2) その効果を測定できる客観的指標の有効性の検証 (課題3) その客観的指標に基づいた多感覚提示ディスプレイの工学的設計指針の確立 本年度はまず,実験システムの構築と実験の遂行およびデータ解析を実施した.身体移動体験は身体全体で生じるものであるが,そのうち,下肢や足を被刺激部位としたときに生じる歩行感覚を対象として,足底への振動刺激提示と反応時間の計測を可能とするシステムを構築した.足底への振動刺激提示のうち特定の振動波形のときに歩行感が生成できることを確認した.また,評価実験に使用する接近音の録音をあわせて実施した.これらを用いて第2年度以降は身体移動体験の効果の大きさを主観評定だけでなく,身体近傍空間内の感覚間相互作用による反応時間の縮減といった客観的指標からも推測することを目指す.また,当該年度に導入した3軸モーションプラットフォームを用いて,立体映像をHMDで提示しながら,低周波の身体揺動や回旋運動を提示するシステムの構築を実施した.また,当該3軸モーションプラットフォームの応答特性を調べ,評価実験に使用するためのパラメータ範囲を同定した.これらを用いて第2年度以降に身体移動体験を創出する手法の確立と適用限界の検証を計画している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R1年度は研究代表者が東京大学への異動に伴い,研究拠点を移したが,研究素材の移動手続きに時間がかかり予定外のタイムロスを生じたものの,年度終了時までには実験系の再整備を追え,予定通りの進捗を達成した.具体的には前年度から導入した3軸モーションプラットフォームの応答特性を調べ,評価実験に使用するためのパラメータ範囲を同定した.その上で,上下動揺および回旋に対する擬似的歩行感とVR酔いの評定値を比較し,論文として成果発表を実施した.これらを含めて,年度内に5件の査読付き論文誌の掲載(うち3件は研究代表者が筆頭責任著者)や16件の査読付き国際会議プロシーディングスへの掲載を済ませ,いずれも順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に則って研究を推進し,前年度までの研究内容を一層深めながら,擬似身体移動感の定量的評価法の一般化を図る.具体的には第1年度で構築した足底への振動刺激提示と反応時間の計測を可能とするシステムを第2年度以降の擬似歩行感覚手法に適用させる.また,足底への刺激の時間間隔を変化させて歩行周期を変化させたような刺激パターンでの主観・客観指標について評価する.また,VR空間内で本手法を利用したときの効果として,R1年度に導入した3軸モーションプラットフォームを用いて身体揺動や回旋運動を提示することで,身体移動感覚の生起効果を調べる.その上で視覚・前庭感覚・触覚情報のそれぞれの組み合わせに関して所望の身体移動体験に適した刺激周期・刺激強度を選定する.以上の研究成果についてまとめ,論文投稿を年度内に完了させる.
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