研究実績の概要 |
本研究では,対象となる複雑な現象が従う物理的な法則(ダイナミクス)をデータから抽出するための統計的機械学習に関する理論体系とアルゴリズムの構築に取り組む.特に,物理分野で最近高い注目を集めるクープマン解析を中心とした作用素論的解析を機械学習の枠組みに基づき融合的に発展・拡張させ,非線形性やマルチスケール性を伴う複雑な系の情報抽出とその信頼性評価を実現する枠組みの確立を目指すものである.また,抽出される情報を統計的予測に用いるための学習アルゴリズムの開発も行う.これにより,データ駆動により複雑現象を理解するに資する科学的知識抽出,そしてそれを更に予測へ用いるための新たな理論・アルゴリズム体系の創出を目的として研究を進めてきた.最終的には,手法評価に加え,複数ドメインにおける研究者との共同による応用的研究を行いその有用性を検証するというものである. 当該年度では,これまで開発してきた動的モード分解に関連したダイナミクスの抽出法をさらに発展させ,動画のような高次元の時系列データに対してオートエンコーダを介した低次元化を介した手法の提案(Ul Haq et al., Computer Vision and Image Understanding (2022))や,ラベルを有する複数の時系列データに対してラベル情報を有効に用いて判別的なダイナミクスのパターンを取り出す手法の提案(Takeishi et al., SIAM J. Applied Dynamical Systems (2022))などを行った.また,開発した手法を複数ドメインへ適用し,例えば,脳波解析に適用して人の行動指標の予測へ有用であることを示す(Ikeda et al., NeuroImage (2022))などの成果が得られた.
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