研究実績の概要 |
本研究プロジェクトでは、AIにおける論理推論を代数的に計算するための新しい枠組を提案し、実験評価によりその有効性を検証した。具体的には、記号表現された論理プログラムをテンソル空間における代数表現に変換し、演繹、非単調推論、アブダクションといったAIの高次推論を線形代数的に計算する。また、計算高速化のための最適化手法を導入し、実験評価を行った。研究最終年度である2022年度の研究成果は以下の2点である。
(1) 演繹推論高速化のために導入したスパース行列の手法をデフォルト推論を行う非単調な論理プログラムに拡張し、実験評価を行った。その結果、プログラムに出現するデフォルト否定の個数を制限した状況下で、論理プログラムの最新のソルバーの一つである clasp を凌ぐパフォーマンスが得られた。本研究成果はジャーナル論文として New Generation Computing, vol.40 (2022)で発表した。
(2) アブダクションの行列計算効率化のために部分計算の手法を導入し、ベンチマークテストを行った。実験の結果、人工的に作成したデータおよび実データの両方で、パフォーマンスの向上が確認できた。またスパース行列の手法と組み合わせることで、さらなる向上が得られることが確認できた。本研究成果は 2023年1月に米国で開催された国際会議 25th International Symposium on Practical Aspects of Declarative Languages (PADL 2023)で発表した。
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