研究課題/領域番号 |
18H03289
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
津本 周作 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (10251555)
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研究分担者 |
平野 章二 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (60333506)
河村 敏彦 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (70435494)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アクティブマイニング / データマイニング / 病院情報システム / 診療支援 / 医用人工知能 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は知能情報学的手法を用い,病院情報システムの知能化を実現するプログラム作成のための以下の基盤技術(アクティブマイニングプロセス)を研究することにある。本研究では,病院情報システムの知能化に関する要素技術を確立し,その実現可能性を実証・評価のみならず,過去の症例から学習を進める病院情報システムを実現するための基盤技術を研究する。本研究課題の実現において,特に重要な技術的課題は以下の4つがあげられる:(a)分散データベースに蓄積された時系列データをいかに抽出し,データウェアハウスとして構築するか? (b) 時系列データとして得られたデータウェアハウスからどのような構造をもった時系列パターンを生成するか? (c) マイニング結果とガイドラインとの間に乖離があった場合,その乖離を解消するための具体的な方法は何か? (d) アクティブユーザーリアクションをできるだけ自動化することができるか? (e)新しいプログラムの実装後の時系列的な変化をどのように定量的に評価するか? という点にある。本年度においては,この中で,(a)-(c),(e)を中心に研究を進めた。(a)に関しては,病院情報システムにおいて蓄積されてこなかった看護必要度,臨床における機能評価のスコア評価について,必要な入力項目および病院情報システム内のデータを取り出して,評価するアルゴリズムを実装,新たに設置したデータウェアハウスサーバー上に実装した。(b,c)に関しては,上記のような入力を含めた時系列データから頻出するパターンを取り出す,あるいは時系列データの類型化を行うプログラムを実装した。病院情報システムでのアクティブマイニングプロセスの実践については,外来待ち時間の分析,クリニカルパスの帰納的構築,退院時要約の自動分析,看護必要度の評価という具体的な課題で,一定の成果を上げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年の研究の遅れを取り戻すべく,課題に取り組んでいるが,いくつかの実装上の困難があり,その解決に時間を要している。(a)については順調に進んでいるが,目標であった,(b) 時系列データとして得られたデータウェアハウスからどのような構造をもった時系列パターンを生成するか? については,時系列パターンの効率的な生成法を開発したが,得られた時系列パターンを専門医に検討してもらったところ,(1)時間的な情報はうまく抽出できているが,得られたパターンが短すぎる,(2)共起情報に左右されてしまい,パターンの内容がわかりにくい,(3)得られるパターンの数が疾患によっては少なすぎるのではないか等の反応があり,これらを解決するようなパターン生成の開発に取り組んでいる。(a,e)については,病院情報システムの看護行為についてのマスタの類似構造の抽出,病院システムへの実装,看護行為入力数の軽減という定量的な形で一連の成果が得られ,現在,評価をさらに進めて,今年度の出版を計画している。(d)については,実際のアクティブユーザーリアクションを専門家から知識獲得することは十分可能となったが,このプロセスをまだ自動化することができていない。一方,退院時要約の自動分析においては,得られた分類器で90%以上の正答率が得られ,誤判別例を診療情報管理士に検討してもらったが,時間関係の複雑な例以外は適切に動作していることがわかり,今後,実環境でのアクティブマイニングプロセスの評価を進め,特に,(d) アクティブユーザーリアクションをできるだけ自動化することができるか? (e)新しいプログラムの実装後の時系列的な変化をどのように定量的に評価するか? についての研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
具体的な問題に焦点をあて,プロセスの実践を進める,2018年-2019年度の研究で,外来待ち時間の分析(系列マイニング),クリニカルパスの帰納的生成(時系列マイニング),退院時要約の自動分析(テキストマイニング),の3課題は,アクティブマイニングプロセスのサイクルを反復するのに適切な課題であることが明確になった。これらの課題については,研究を深化させていく予定である。これらに加えて,2019年度に開始した,看護必要度分析において,病院のデータから必要度の時系列変化を推測するモデルを構築し,実際のデータとの相違について算出,看護師と議論を重ね,新たなデータ取得を進めるというプロセスの実践を行えた。これについては,必要度の推測式の精度を上げるとともに,この推測式の実装による看護支援を試みる予定である。さらに,上記のクリニカルパス生成の方法が看護マスタの類似構造の探索による看護行為マスタの効率化に利用可能であることが,2019年度末に明らかになった。マスタ効率化が看護業務の効率化に直結するため,本年度はこの課題については,アクティブマイニングプロセスの実践を繰り返し試行する予定である。進捗状況で述べた,系列マイニングの問題点の解消を検討しつつ,上記の5課題について,さらに(b) ユーザー指向アクティブマイニング: 抽出されたデータ集合に時系列マイニング・系列マイニング・プロセスマイニング等の方法を適用し,診療支援のモデルを構築していくことが可能であると考えている。さらに,(d) アクティブユーザーリアクション: (b)で得られた結果を元に診療支援システムを病院情報システム内に実装する,(b,c)の部分について,マイニングのアルゴリズムを実装する。(a)アクティブ情報収集については,これらの課題で実装した仕組みについて,より汎用性の高い統合的なアプローチの研究を行う予定である。
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