研究課題/領域番号 |
18H03305
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
長尾 智晴 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (10180457)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機械学習 / 深層学習 / ニューラルネットワーク / 進化計算法 |
研究実績の概要 |
本研究では,申請者らが浸透学習(percolative learning)と呼ぶ階層型神経回路網の学習手法の基礎理論・実現方法,及び社会実装を想定した複数分野への応用について研究を行なう.浸透学習は学習時のみ利用できる入力情報(Aux)を,学習時・運用時の両方で利用できる入力情報(Main)に“浸透”させることで,Mainだけを学習・運用に用いた場合より高精度の認識・分類を実現する手法である. これまでに,まず浸透学習回路を進化計算法で最適化する手法を開発した.浸透学習では,AuxとMainの両方を用いた学習の後で,Auxの情報を削減しながら影響が出ないよう一部の結合荷重を修正するが,その際の方法,Aux,Mainに関わる神経回路網の構造などを最適化することで性能を向上させることがわかっており,ここではそのための最適化手法を開発し,実験により有効性を確認した. 次に,脳波,心拍などのバイタルデータをAuxとし,表情動画像をMainとするマルチモーダルなデータに対して適用して手法の有効性を確認した.脳波情報を浸透させた浸透回路によって,画像を見ている人の表情だけを用いる通常の場合より高精度な認識を実現した. また,時系列予測への適用のための基礎方式を開発し,実際のデータに適用してその有効性を確認した.この際,未来の情報をAux,現在までの情報をMaxとして入力することで,未来から過去を予測する式を考慮した予測を実現することができることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は,研究期間中に次の①~⑤の研究項目を同時並行的に実施する.①浸透学習の基礎手法の確立: 基礎構造と学習アルゴリズムを確立する.②浸透学習の改良手法の開発: 浸透させる入力情報を最適化する手法を開発する.③応用1:マルチモーダル認識へ応用して有効性を検証する.④応用2:マルチセンサ認識へ応用して有効性を検証する.⑤応用3:時系列予測問題へ応用して有効性を検証する. これまでに,①,②の一部,③,⑤の一部を実現して提案手法の有効性を確認した.また,浸透学習法に興味をもつ企業が主催するコンソーシアムにおいて,浸透学習だけの研究会が作られ,そこに複数の企業が自主的に参加するなど,社会実装のための準備を確実に進めることができた.以上により上記の評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は予定以上の成果を残しながら問題なく遂行中であり,今後もこのまま実施する予定である.本研究の2年目である2019年度は,2018年度に開発した手法をさらに改良してその精度,有効性を高めるとともに,上記の応用1~応用3に対する応用を通して,理論的な考察だけでなく,実践的な有効性を併せて追求する予定である.2019年度は,特に応用2のマルチセンサデータ処理への適用として,自動車制御信号を扱う予定である.Auxとしては試験車両に搭載されている多数のセンサ情報,Mainを市販車両の極めて限定的なセンサ情報とし,市販車両のセンサ値に対して試験車両のセンサの情報を“浸透”させることで,通常は実現不可能な制御を実現する予定である.さらに,様々な応用に対する社会実装を前述の研究会などを通して積極的に推進するとともに,国際会議などで成果を公表する予定である.
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