研究課題/領域番号 |
18H03311
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
飯尾 尊優 筑波大学, システム情報系, 助教 (70642958)
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研究分担者 |
塩見 昌裕 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 知能ロボティクス研究所, 研究室長 (90455577)
下原 勝憲 同志社大学, 理工学部, 教授 (10395105)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 知能ロボティクス / ソーシャルロボティクス / ヒューマンロボットインタラクション / 複数ロボット対話 |
研究実績の概要 |
当該年度ではPassive/Interactive Social Mediaとしてのロボットの対話戦略に必要な状況認識技術の構築に取り組んだ。また、次年度に行う対話戦略構築に関する予備的な検証を進めた。 具体的には、実環境での音声認識の困難さの推定に関し、測距センサとマイクロホンアレイを統合したセンサネットワークを構築し、マイクと話者頭部の距離と頭部方向の角度を計測できるようにした。これにより、話者とマイクの距離や発話方向とマイクの指向性のずれの大きさから認識精度の低下を推定することができる。また、人々の対話参加意欲の推定に関して、前述のセンサネットワークにロボットに搭載されたカメラを統合し、人々がロボットに顔を向けているかどうかを計測できるようにした。これにより、ロボットが人に顔を向けた時の視線接触の成立頻度から対話意欲を推定することができる。これらの推定機構は現在実装中である。 次年度の対話戦略構築に向け、複数のロボットが会話に参加した時の人の認知や行動への影響を予備的に分析した。具体的には、語彙の引き込み現象と呼ばれる、人同士の会話において言葉が互いに模倣される傾向に関し研究を進めた。語彙の引き込み現象は、相手に対する信頼感やつながり感と関係があると言われており、効果的な情報提供という観点から重要な現象である。研究の結果、複数のロボットとの会話においては、単体のロボットより、人がロボットの言葉を模倣する引き込み現象がより頻繁に発生することを見出した。これは、複数ロボットによる情報提供が人々により効果的である可能性を示唆している。この成果は、5th Asia-Pacific World Congress on Computer Science and Engineering 2018で、Best Paper Awardを受賞するなど国際的にも高く評価されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Passive/Interactive Social Mediaとしての複数ロボット対話システムの基本部分はすでに構築しており、音声認識の困難さと対話意欲の推定に関しても基本のモデルは出来上がっており、現在実装中である。これは、当初の研究計画のスケジュールのとおりである。 また、対話戦略の構築に関し、すでにいくつかの予備実験を実施しており、今後の詳細な実験を実施するための準備は整っている。 以上の事から、研究はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
現在、本研究は当初の研究計画に示した通りに順調に進展しているため、研究計画の変更はない. 今後、状況認識技術の実装を完了させたのち、音声認識困難児の対話戦略と対話参加意欲に応じた対話戦略の2点についても研究を進めていく。具体的には、引き込み現象や複数ロボットの連携によって対話の破綻感の緩和や対話意欲の高い人を中心に情報提供を進めるための戦略を構築する。ここで構築される状況認識技術や対話戦略の有効性について、最終年度の実証実験を見据えて、実環境で予備検証を進める。具体的には、現在、大学近辺の科学館と実験について交渉を進めており、了解が得られれば、そこでロボットを使ったテストを開始する。科学館の了解を得ることが難しい場合は、大学構内での予備検証を進める。
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