令和2年度は、これまでに開発してきた運動最適化および機械学習を用いた運動計算の枠組みを発展させ、これまでの幾何学的な運動評価に加えて、力などの動力学的な評価を行うことが可能な運動推定・生成法の構築に取り組んだ。具体的には、運動における速度・加速度に関するパラメータを変数として扱うことができる運動最適化の枠組みを応用することで、外力が伴う人の運動を学習して別の人型システム(ヒューマノイドロボット)で再現する技術を開発した。例としてアシスト機器を用いた人の運動データを計測し、運動と外力のデータセットを用いて力学的な運動場へ変換・学習し、運動最適化に基づいて人からヒューマノイドロボットの運動へと変換し、ヒューマノイドロボットによる人の動作を実験的に生成できた。一方、昨年度までに開発してきた人の身体運動解析システムにおいて、運動最適化や機械学習において用いられる運動に関する評価関数あるいは損失関数の設計は既知としてこれまで扱っていた。人の運動データからこれら評価関数の設計法を抽出する逆問題(逆最適化問題)は、計算難度が高いため複雑な人型システムでの実現は困難であった。一方、前述の人型システムの運動生成の枠組みを用いることで、様々な評価指標を用いて人型システムの運動を生成し、それら運動データベースを構築し、機械学習的手法を用いて低次化された運動と評価関数の関係を学習した低次元空間を構成し、疑似的ではあるが逆運動最適問題を高速に解く手法を開発した。
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