研究課題
本研究では,神経回路網を多細胞システムとして捉え,その情報処理をボトムアップに解析する実細胞実験系を構築することを目指している.昨年度までに,培養神経回路に摂動を与えるための光インターフェースを確立することができた.この実験系を用いて,本年度は,脳情報処理において重要な自発活動パターンが,外部摂動とネットワーク構造に依存して制御されるメカニズムを解析した.具体的には,時空間的に非同期的な入力が印加されると発火パターンの複雑性が一過性に上昇し,その上昇率は神経細胞間がランダムに接続された回路に比べて,生体の大脳皮質神経回路などで見られるモジュール構造を有する回路において大きくなることを,培養細胞を用いた実験で示すことに成功した.塩化カリウムを用いて回路全体の興奮性を増加させた対照実験では同様の効果は表れなかったことから,神経活動の複雑性の表出には,構造制御に加えて,時空間的に非同期的な摂動入力が必須であることも見出した.さらに,数理モデルの解析により,シナプス伝達の短期抑制の度合いが摂動入力依存性に変調されることが本質的に重要であることを明らかにした.近年の大脳生理学の研究により,感覚器からの入力が無い状態でも,視床から大脳皮質に対して相関の低いバックグラウンド信号が送られていることが分かっている.本研究成果は,脳神経回路が神経細胞という生体素子を用いて柔軟な情報処理を実現する作動原理の理解を押し進めるものである.
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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