研究課題/領域番号 |
18H03347
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
伊藤 毅志 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40262373)
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研究分担者 |
保木 邦仁 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (00436081)
山本 雅人 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (40292057)
松原 仁 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (50325883)
池田 心 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (80362416)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゲームAI / 人間らしさ / 思考支援 / 思考の可視化 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、ゲームAIと人間の思考の違いを理解して、人智を超えたゲームAIの思考を人間に理解しやすい形に表示して、人間の知を拡張する手法を提案し、その効果について認知的評価を試みることである。 この目的を達するために、本研究では、近年急速な進歩を遂げた「将棋」「囲碁」、不確定ゲームの代表として「カーリング」、不完全情報ゲームの代表として「麻雀」「人狼」を例に挙げて、それぞれのAIのレベルの違いを考慮した支援方法を模索することにした。「将棋」「囲碁」「麻雀」は、すでに人間を超えるレベルか匹敵するレベルにあり、このAIを利用してプレイヤの強さ(棋力)を測る手法に関する研究を推し進める。棋力を可視化して、プレイヤにフィードバックすることは、学習において重要な意味を持つ。 「カーリング」の分野では、まだAIが十分なレベルに達していないので、本格的な機械学習を導入したAIの研究が求められている。また、実環境の影響も強く受けるので、コンピュータ場でこれらの実環境に対応できるプラットフォームの改良も求められており、改良に取り組んでいる。「人狼」AIは、まだ人間のレベルのプレイには遥かに及ばない。AIの改良に取り組むと同時に、人間のプレイヤに関する認知科学的研究も進めている。 今年は初年度であり、「将棋」「囲碁」「麻雀」を中心に棋力推定の研究を精力的に行った。また、十分に強いAIを人間の対戦相手とするにあたって、どのようにレベルを下げるのかについて、様々なアプローチで研究を進めた。「カーリング」AIとプラットフォームの改良についても、精力的に進めた。興味深い研究結果も出始めており、これらの結果をもとに、人間の知を拡張するためのAIの利用法について、考える下地ができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「将棋」「囲碁」を題材とした研究では、AIを用いることでかなり精度良く棋力を推定するシステムの構築に一定のめどを立てることができた。特に将棋では、非常に少ない対局数で棋力を効率的に推定できる手法を提案することを可能にした。「麻雀」でもAIを用いたプレイヤのレベル推定手法の研究が行われ、一つの方向性を示すことができた。 「カーリング」を題材とした研究では、これまでコンピュータ上で戦略を議論するために機能してきたデジタルカーリングを実環境の変化、ルールの変更に対応できるような形に作り直す作業を行った。これによって、2018年から導入された5ロックルールに対応できるようにしたばかりか、氷の状態やカールの大きさ、プレイヤの個性をパラメータとして変更できる仕様を実現した。それと平行する形で、機械学習を用いたAIの強化も行われ、研究の下地を作ることができた。 その他に、関連するゲームとして、「ガイスター」「RPG」「テトリス」「HEX」などのゲームAIに関する研究も行い、ここで得られた知見も本研究に応用できる準備とすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
将棋、囲碁、麻雀などについては、伊藤、保木が中心となって、プレイヤの実力を測るシステムの構築を行ってきた。かなり実用的なレベルの棋力推定が行えるようになったきたので、このシステムを用いて、学習支援や対戦相手となるAIの構築に着手したい。人間を遥かに上回るAIとの対戦はときに苦痛であり、人間の能力を拡張する上ではあまり適さない。自分の実力よりも少し上の良い好敵手となるAIの開発が望まれる。池田らが行っている研究とも連携して、ユーザのレベルに対応して、適度に手加減をするAIの開発を行っていきたい。 カーリングに関しては、伊藤が中心となって、実環境を取り入れたデジタルカーリングの開発に着手している。実環境では、氷の状態、プレイヤの能力差など多くの変化するパラメータが存在する。それを取り入れた新しいデジタルカーリングを提案している。このシステム上で動作するカーリングAIの開発を山本らと行うことで、実環境に対応した戦略支援システムの開発を進めていきたい。また、床の上のカーリングとも呼ばれるボッチャの研究への応用も進めていきたい。 まだ人間の知を上回っていないゲームとしては、人狼が挙げられる。松原、伊藤は、この分野の人間の思考の特長について認知科学的な研究を進めている。すでに、平成30年度に5人人狼を題材にした認知実験を遂行しており、現在分析を鋭意進めている。これらの知見を活かして、コミュニケーションを含む人間の意思決定の研究を深めていきたい。
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