研究課題
2019年度は、対象とした永久凍土エリアのうち、東シベリア・マイヤ地区、アラスカ・ノーススロープ、フェアバンクス近郊、大雪山系におけるInSAR解析および現地調査を実施した。東シベリアではこれまでの調査地マイヤに加え、新たにバタガイ調査地を追加した。マイヤは居住地全体が高含氷率永久凍土上に存立し、サーモカルストの影響を受ける地域である。バタガイ近郊では、森林火災が最近10年間に頻発し、森林生態系へサーモカルストの影響が危惧される地域である。これらの対象地では地表面変位の時空間的変化をマイクロ波リモートセンシング(InSAR解析)とフィールド測量によって測定し、サーモカルスト沈下と季節的地表面変位の空間分布率の把握を試みた。InSAR解析の結果を検証するために、約35測量点を含む30 x 30mの5つのプロットにおいて2018-2019年の9月下旬から10月初旬に比高測量を実施した。サーモカルスト沈下の進行は、対象地全体の平均値としてInSARでも整合的な結果が得られたが、より詳細な検証には観測の継続と観測点の追加が必要であることが示唆された。これらの研究結果は科学雑誌に投稿し、査読中である(Abe et al., 2020)。2019年9月下旬、バタガイにおいて2014年の火災跡地でフィールド調査(相対高さ、土壌水分、解凍深さ、土壌サンプリング)を実施した。また、2018年、および2019年8月の火災跡地を訪問し、2014年の火災区と同じ調査を行い、今後の変化をモニタリングする予備調査を実施した。これまでのInSAR解析結果は共同研究者A. N. Fedorov氏を通じて地域コミュニティーに提示された。この他、アラスカのノーススロープ、フェアバンクス、大雪山系におけるInSAR解析および現地調査も同時に進行中である。
2: おおむね順調に進展している
衛星画像解析および、現地検証調査は予定通りに実施することができた。一方、大雪山系では、テレメトリーシステムの構築を予定していたが、天候等が原因で運用開始が遅れている。
本研究3年目の2020年度は、東シベリア・マイヤおよびバタガイ、アラスカ・フェアバンクス、大雪山系における現地検証観測を継続し、2020年中に取得される予定のSAR画像を用いたInSAR解析を追加する。大雪山系の調査地においては、テレメトリーシステムの構築を完了させる。アラスカ・ノーススロープにおける現地調査結果とInSAR解析結果について論文にまとめることを予定している。
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