研究課題
2012年から2021年にかけての、中国の排出量変化に伴って生じたエアロゾル化学成分の組成の変化についてまとめた。2020年についてはCOVID-19の蔓延にともなう大規模なロックダウンの効果も検討に加えた。以下の点が明らかにされた。(1)中国でのSO2,NOx排出量の経年変化の差により日本のエアロゾル中の硝酸塩/硫酸塩比が変化している(湿性沈着量と大気中の濃度ともに)。(2)この変化には,硫酸塩-硝酸塩-NH3の平衡関係の変化が重要である。越境輸送される硫酸塩の大気濃度は経年的に減少し,日本域では経度方向には0.2マイクロg/m3/度で減少していた。COVID-19によるロックダウンの影響もあり,越境輸送の寄与の定量的な評価の難しい硝酸塩にもリモート地点のデータから同様の傾向が見えた。(3)2020年は中国での大規模なロックダウンによる排出量の変化と気象条件の複合的な影響により,硝酸塩/硫酸塩比比が前年までの変化傾向と異なっていることが判った。以上の点を化学輸送モデルで検討した。その結果、モデルを用いることで、観測された特徴がほぼ再現出来るが,硫酸塩の絶対濃度の一致は難しい。これは,排出量推計の誤差,不均一反応と火山影響が不確定要因と考えられる。硝酸塩にも越境輸送の傾向が見えるが,九州域での一致性は低く,気象要因の影響を含めて硝酸塩のモデルの精緻化は今後の課題である。2021年のついては新型コロナウィルスによる経済活動の再開に伴う汚染状況の変遷に注目して解析を進めた。その結果、2021年に長距離のPM2.5輸送が戻ってきたことを検出した。さらに、数値シミュレーションの結果、COVID-19期間中の中国の排出状況は、2021年に戻ってくるこの影響を説明することができなかった。2021年の中国の排出状況がCOVID-19以前の状態に回復することを示した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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