研究課題/領域番号 |
18H03361
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
武田 重信 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (20334328)
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研究分担者 |
塩崎 拓平 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 特任研究員 (90569849)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 海洋生態 / 窒素循環 / 微量金属 / 植物プランクトン / 硝化細菌 |
研究実績の概要 |
学術研究船「白鳳丸」によるインド洋KH-18-6次航海(11-12月)に乗船し、ベンガル湾中央部の南北観測線上の3定点において、亜硝酸塩、硝酸塩などの栄養塩、鉄、銅、亜鉛などの溶存微量金属濃度、硝化細菌群集遺伝子の詳細な鉛直分布を把握するための海水試料を採取するとともに、亜硝酸塩極大層付近から現場プランクトン群集を含む海水試料を採取して、鉄、銅、亜鉛の添加培養実験を船上で実施し、クロロフィル、亜硝酸塩・硝酸塩、アンモニウム塩の濃度変化や硝化活性などを測定した。亜硝酸塩極大層付近の植物プランクトン群集は、強光条件下でいずれの測点についても鉄添加に対する増殖応答を示したことから、鉄と光による共制限を受けていたことが明らかになった。また、ベンガル湾の測点では、弱光条件下でも鉄添加による増殖促進を確認することができた。今後、栄養塩や微量金属、硝化活性等の試料分析を進め、亜硝酸塩極大層の形成要因を検討する。 微生物群集による硝化過程は光とpHの変化によっても影響を受けることから、北極海の硝化生物を対象としてpH制御実験を行ったところ、pHがコントロールに対して0.22以上低くなると硝化が有意に減少することが分かった。一方、光制御実験の結果から、硝化が強光による制限を受ける閾値が0.11 mol photons/m2/d付近にあり、硝化の感度はpH変化よりも光変化に対して顕著に大きいことが示された。これらの結果から、地球環境変動に伴う鉛直的な水柱安定性の変化が、海洋亜表層の光量に影響を及ぼすことによって、硝化を通した無機窒素化合物の組成比の変化や、それに伴う生態系構造の変化をもたらす可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インド洋ベンガル湾中央部の南北観測線上の定点において、初年度に計画していた現場観測、試料採取、船上培養実験を予定通り実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
インド洋ベンガル湾における海洋観測や船上培養実験で得られた試料の分析を進め、現場の植物プランクトンおよび硝化細菌群集の生物量や生物活性に関する詳細な鉛直分布と、栄養塩・微量金属・光量などの環境パラメータとの関係について解析する。 北太平洋亜熱帯域での海洋観測については、本格的な調査航海を翌々年度に実施する予定となったことから、翌年度はインド洋データの解析に重点をおくとともに、得られた知見を基に北太平洋での予備的な観測研究を進める。
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