研究課題/領域番号 |
18H03365
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村山 昌平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 総括研究主幹 (30222433)
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研究分担者 |
石戸谷 重之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (70374907)
堀 知行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (20509533)
吉竹 晋平 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 専任講師 (50643649)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 温室効果気体動態評価 / 森林生態系 / 土壌微生物代謝 / 超高感度安定同位体プロー ブ法 |
研究実績の概要 |
岐阜県高山市冷温帯落葉広葉樹林観測サイトにおいて、渦相関法によるCO2フラックス、チャンバー法による温室効果気体(GHG; CO2, CH4, N2O)の土壌フラックス、大気中・土壌空気中のGHG濃度・CO2安定同位体比、酸素濃度および気象・土壌環境の観測を継続して行った。得られたデータより、各気体成分濃度およびCO2安定同位体比の高度・深度分布および季節変動、およびフラックスの季節変動、それらの尾根部、斜面部、谷部の特徴的な違いを明らかにすることができた。 平成30年度に製作した、成分分別を極力抑えた土壌チャンバー空気採取装置を用いて実際の空気採取を行い、土壌呼吸に伴う酸素とCO2の交換比を観測した。これまでに4回の観測を行い、平均で-1.12±0.01の交換比が得られた。 昨年度から引き続き、レジンコア法を用いた窒素無機化・硝化速度の測定を行った。本年度は特に積雪期である2-4月期および雪解け後にあたる4-6月期における測定を行い、昨年度までの結果と合わせることで1年間の窒素無機化量・硝化量を明らかにした。また、ATP法を用いて土壌微生物バイオマスを測定し、谷部・尾根部や表層・深層による違い、季節変化等について解析を行った。 前年度までに採取された森林土壌を対象に、抽出・精製されたDNA試料(16S rRNA遺伝子、18S rRNA遺伝子)の塩基配列を次世代シーケンサーにより解読した。α多様性や主座標分析によって微生物多様性の評価を行うとともに、土壌微生物群集を様々な分類群(門、綱、目、科、属、種)にて系統学的に特徴づけた。その結果、採取場所(尾根、谷)や深度(0-5cm、30-35cm、75-80cm[谷のみ実施])に応じて特徴的な微生物群集構造が形成されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた観測や実験、試料の採取を概ね行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
岐阜県高山市冷温帯落葉広葉樹林観測サイトにおいて、渦相関法によるCO2フラックス、チャンバー法によるGHG(CO2, CH4, N2O)の土壌フラックス、大気中・土壌空気中のGHG・酸素濃度およびCO2安定同位体比等の観測を継続して実施するとともに、これまでに得られたデータを整理し、季節変動の特徴や尾根部・谷部の差異を明らかにする。 成分分別を極力抑えた土壌チャンバー空気採取装置を用いた空気採取を継続し、採取時期による酸素とCO2の交換比の違いの有無を検討することで、当観測サイトを代表する土壌呼吸に伴う交換比を評価することを目指す。 レジンコア法によって得られた窒素変換速度(無機化速度、硝化速度)と、微生物バイオマスデータおよび環境要因データをとりまとめ、微生物による窒素変換速度の季節変動および尾根部・谷部の差異を明らかにしたうえで、その変動要因について解析する。 森林土壌由来DNAの大規模遺伝子解析で得られた微生物群集構造データからCH4動態や窒素変換に関わる微生物群(メタン生成菌、メタン酸化菌、硝化菌等)の情報を抽出し、前述の気体観測データ、土壌呼吸活性、窒素変換速度との関係性を解析する。微生物の代謝活性を反映するRNAに焦点を当て、DNA解析では追跡できない森林土壌中の微生物の代謝応答を明らかにする。また谷部の深部領域に超高感度SIP法を適用し、CH4の土壌フラックスに関与する未知微生物を同定する。 得られたデータを総合的に解析し、当観測サイトにおけるGHG収支の季節変動に対する土壌微生物代謝の寄与を評価する。参画研究者間でメールやミーティングを通して、情報共有やデータの相互比較に関する議論等を行う。成果をとりまとめて、学会・論文発表等により積極的に発信していく。
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