研究課題
研究計画2年目は、サンゴ骨格成長量についての3次元計測の実現に向けた検討を行った。従来の切断面に沿った直線成長量(cm y-1など)に代わり、群体全体での石灰化量(1群体あたりや群体表面積あたりのgCaCO3 y-1など)を求める計測法を開発することを目指した。これにより、現在進行中の海洋酸性化トレンドに対応したサンゴの石灰化量の変化を検討することができる。この前提として、まず枝状サンゴ群体を例に、表面積計測のルーチン化と精度評価を実施した。この目的のために、マイクロフォーカスCTスキャンを用いてハナヤサイサンゴ群体の表面積計測を実施した。表面積の計測としては、従来はアルミ箔法と呼ばれる方法が一般に用いられている。アルミ箔法とマイクロフォーカスCTによる表面積計測を比較したところ、アルミ箔を用いた計測法よりもマイクロフォーカスCTによる表面積は、平均で7 cm2程度大きな値が得られた(n=10)。これは、マイクロフォーカスCTスキャンにより、アルミ箔法よりも詳細な表面形状を読み採れたためと考えられる。また、石灰化量測定用のサンゴ骨格試料を、新たに得ることを目的として、海洋酸性化条件での飼育実験を実施した。天草・牛深の温帯性サンゴ礁の水深約4 mに分布するスギノキミドリイシの4つの群体からそれぞれ12本、計48本のサンゴ枝を採取し、試料として用いた。採取した試料は接着剤でプラスチックボルトに固定し、均一な環境下で飼育できるようにした。二酸化炭素分圧をそれぞれおよそ450、750、1200、2000 ppmに調節された4水槽を用意し、各群体から3本ずつの試料を水槽に配置し、約半年間飼育した。スギノキミドリイシについて二酸化炭素分圧の上昇に伴い重量成長率が減少することが確認された。これらの試料について、次年度以降にマイクロフォーカスCTによる各種解析を予定している。
2: おおむね順調に進展している
2020年2月頃より新型コロナウイルス感染症の対策強化に伴い、サンゴ飼育実験を実施している新潟県柏崎市の公益財団法人海洋生物環境研究所への出張が不可能になるなど、若干の影響が生じている。
4年計画の2年目の終了にあたり、一定の進捗は得られているが、今後、参画研究者の連絡を密にして、研究の加速を図る。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件)
Methods in Ecology and Evolution
巻: - ページ: -
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
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