研究課題/領域番号 |
18H03377
|
研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
志村 勉 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (40463799)
|
研究分担者 |
笹谷 めぐみ (豊島めぐみ) 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (80423052)
稲葉 洋平 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (80446583)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 放射線発がん / がんの微小環境 / 活性酸素 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
これまでの放射線発がん研究では、放射線発がんに関わる特異的な遺伝子変異(放射線のシグナチャー)の同定を目的に研究が進められてきた。しかし現在までに射線のシグナチャー)の同定と放射線発がんの機序解明には至っていない。近年、核のDNA損傷とともにエネルギー代謝を制御する細胞小器官ミトコンドリアの放射線応答が注目されている。私はこれまでの解析から独自に、ミトコンドリアから発生する活性酸素が、ミトコンドリアの酸化損傷や放射線発がんに関与することを明らかにした。我々は、放射線発がんにおけるがん細胞と周辺部の細胞の相互作用(がんの微小環境)の役割に焦点を当て解析を行い、放射線照射でミトコンドリアが活性化し、副産物として発生する活性酸素量により酸化ストレスを誘導することを明らかにした。活性酸素はTGFbetaシグナル経路を活性化して下流の平滑筋用アクチン(alpha-SMA)の発現を誘導する。このalpha-SMA発現が、線維芽細胞からCAFを形成に重要であることを明らかにした。さらに、ヌードマウスを用いたヒトがん移植片の解析により、放射線で誘発されるCAFが放出する液性因子が血管新生を介してがん細胞の増殖を促進することを明らかにした。本研究のがんの微小環境の解析により、従来の方法では解析困難であった放射線によるがんの発症メカニズムの解明が期待される
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線発がんにおけるがん微小環境の役割についての解析を行い。放射線が誘発するがん関連線維芽細胞ががん細胞の増殖促進に寄与することを明らかにした。成果を英語論文としてまとめ、国際誌に発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度 明らかにした放射線誘発CAFの再現性の確認し、CAFが誘導される放射線の照射条件の検討を進める。alpha-SMAの発現を指標として、放射線誘発CAFを検出し、放射線の感受性や細胞増殖が必要かなど、放射線誘発CAFのメカニズムについての解析を進める。さらに、抗酸化剤を用いて、活性酸素を抑制し、放射線誘発CAFを抑制して、発がんの防護効果を持つかどうかの検討を行う。
|