研究課題/領域番号 |
18H03377
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
志村 勉 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (40463799)
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研究分担者 |
笹谷 めぐみ (豊島めぐみ) 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (80423052)
稲葉 洋平 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (80446583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射線発がん / ミトコンドリア / がんの微小環境 |
研究実績の概要 |
放射線応答に必要なエネルギーを供給するため、放射線はミトコンドリアのエネルギー生産を活性化することが知られている。エネルギー生産の副産物として発生する活性酸素は、細胞内の酸化還元制御機構により無毒化される。しかし、過剰な活性酸素の増加は、近傍のミトコンドリアを攻撃し、酸化損傷を誘導する。このため、放射線による酸化ストレスは活性酸素が関与し、放射線影響の高感度なバイオマーカーとしてミトコンドリア酸化損傷は有用であると考えられる。 これまでヒト正常線維芽細胞を用いた結果から、放射線照射3時間後からミトコンドリア活性酸素が増加し、その後6時間後からミトコンドリア酸化損傷が誘導されることを明らかにした。(Shimura et.al. Cell Cycle 2017:16(24):2345-2354)。今年度は、抗酸化剤を用いて、放射線によるミトコンドリアの酸化損傷を抑制し、放射線影響の軽減が可能かどうかを検討した。放射線防護剤の開発では、副作用のない許容濃度で防護効果を持つかどうかが課題である。細胞実験結果から、天然物や市販の機能性食品に含まれ毒性が少ない水溶性のビタミンCと茶葉に含まれるフラボノイドのエピカテキンが即効性の抗酸化効果を持つことを明らかにした。さらに、マウスを用いた解析から、エピカテキンが造血細胞における放射線傷害の軽減に効果を持つことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
茶葉に含まれるフラボノイドのエピカテキンが即効性の抗酸化効果を持つことを、細胞実験と動物実験により明らかにした。 得られた研究成果は、原著論文として国際誌に発表した。以上より、計画通りに実験を進め、研究成果を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析では、活性酸素によるDNA、タンパク質、脂質の酸化が酸化ストレスの指標として用いられてきた。我々は、細胞内の活性酸素量の増加に、抗酸化物質の減少が深く関与すると考えている。今後は、細胞内抗酸化物質グルタチオンとその基質や合成経路の中間産物の測定法を確立し、放射線照射後に変化する抗酸化物質の因子を同定する。同定した指標とミトコンドリア酸化損傷の相関関係を明らかにする。 化学分析法を用いて、放射線によるDNAの酸化とグルタチオン量を測定し、線量・線量率効果を検討する。 以上より、放射線による酸化ストレスを高感度に検出するための新たな指標を明らかにする。
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