研究課題
がんドライバー遺伝子の活性化(KRAS等)は、DNAの複製時にストレスを発生しゲノムに障害を誘発するが、細胞はこれに対して細胞死を引き起こすなどバリアー機能を発動し発がんを抑制すると考えられている。すなわち、DNA複製ストレスに曝されゲノムの異常を獲得しがん抑制バリアを回避し生存する過程が、発がんにおいて重要であると考えられるが、DNA複製ストレスの原因の及びその耐性獲得機構は十分に理解されていない。本年度は、KRASG12V発現が誘導する著しいDNA複製フォーク進行速度の低下のATR高発現による回復が、ATRキナーゼ活性依存的であり、かつその下流のChk1阻害剤処理によっても抑制されることを認めた。すなわち、KRASG12Vによって誘発されるDNA複製ストレスに対して活性化するATR kinaseに呼応するATR-Chk1キナーゼカスケードがDNA複製ストレス耐性に重要な役割を果たすことが明らかとなった。DNA複製フォーク進行速度の低下の回復に関連するDNA複製ストレス耐性候補因子をリン酸化質量分析によって解析したところ、KRASG12Vによって上昇するリン酸化部位を特定した。このDNA複製ストレス耐性候補因子のリン酸化部位を、S-to-A(リン酸化不可)に置換した変異体はDNA複製ストレス耐性機能を失うこと、S-to-D(擬似リン酸化)変異体はATRキナーゼに依存せずDNA複製ストレス耐性を示した。すなわち、KRASG12Vによって誘発されるDNA複製ストレスに対して活性化するATR- Chk1 kinaseによって候補因子がリン酸化されることによってDNA複製ストレスに耐性となり、DNA複製を完了することが可能となり細胞ががん抑制バリアを回避することが示唆された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 297 ページ: 100882~100882
10.1016/j.jbc.2021.100882