研究課題/領域番号 |
18H03379
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
鯉淵 典之 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80234681)
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研究分担者 |
竹下 章 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (20322646)
配島 旭 早稲田大学, 人間科学学術院, 講師(任期付) (70555672)
武田 茂樹 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (80282854)
下川 哲昭 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 教授 (90235680)
宮崎 航 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90512278)
細井 延武 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (90543570)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 甲状腺ホルモン / 内分泌かく乱 / 脳発達 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は脳発達におけるTR機能の化学物質による修飾作用の分子基盤解明を目的として研究を行う。そのためのモデル動物作成やTR作用自体の更なる解明も並行して行う。具体的な実績は以下の様である。 a. THによるマウス小脳発達への環境化学曝露の影響を行動解析およびパッチクランプ法により解析した。そしてプルキンエ細胞の長期抑制が,TR作用の抑制により長期増強へと変化することがわかった。 b. cDNAマイクロアレイにより発達期小脳のTH応答遺伝子同定と環境化学物質によるTH応答遺伝子の応答性変化を解析した。発現が変化した遺伝子を同定し,その一部についてさらに詳細な発現プロフィルの解析を開始した。 c. 上記マウスモデルを用い、マウス小脳からDNAを抽出し,同定した標的遺伝子のバイサルファイトシーケンシングを行い、標的DNAのメチル化を解析予定であったが,bの解析が終了していないためこの部分は行えていない。 d. in silicoドッキング解析で化学物質とTRの結合部位と結合エネルギーを推測した。また,TRとクロストークが同定できたエストロゲン膜受容体(GPER)においても化学物質との結合をin silicoで解析した。一方,TRタンパク質結晶化についてはまだ進んでいない。 e. 化学物質による細胞膜を介するTH作用修飾とTR機能への影響を解析する。特にTHの細胞膜受容体と考えられているインテグリンαvβ3とTRとのシグナル伝達のクロストーク,およびGPERとTRとのクロストークについて解析した。植物由来エストロゲン様化学物質であるイソフラボン類がこれら全てに結合することを確認した。また,ガドリニウム造影剤が甲状腺ホルモン系(おそらく膜シグナル)を介して脳発達に影響することを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
a. THによるマウス小脳発達への環境化学曝露の影響を行動解析およびパッチクランプ法により解析した。そしてプルキンエ細胞の長期抑制が,TR作用の抑制により長期増強へと変化することがわかった。 b. cDNAマイクロアレイにより発達期小脳のTH応答遺伝子同定と環境化学物質によるTH応答遺伝子の応答性変化を解析した。発現が変化した遺伝子を同定し,その一部についてさらに詳細な発現プロフィルの解析を開始した。 c. 上記マウスモデルを用い、マウス小脳からDNAを抽出し,同定した標的遺伝子のバイサルファイトシーケンシングを行い、標的DNAのメチル化を解析予定であったが,bの解析が終了していないためこの部分は行えていない。 d. in silicoドッキング解析で化学物質とTRの結合部位と結合エネルギーを推測した。また,TRとクロストークが同定できたエストロゲン膜受容体(GPER)においても化学物質との結合をin silicoで解析した。一方,TRタンパク質結晶化についてはまだ進んでいない。 e. 化学物質による細胞膜を介するTH作用修飾とTR機能への影響を解析する。特にTHの細胞膜受容体と考えられているインテグリンαvβ3とTRとのシグナル伝達のクロストーク,およびGPERとTRとのクロストークについて解析した。植物由来エストロゲン様化学物質であるイソフラボン類がこれら全てに結合することを確認した。また,ガドリニウム造影剤が甲状腺ホルモン系(おそらく膜シグナル)を介して脳発達に影響することを明らかとした。
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今後の研究の推進方策 |
a. THによるマウス小脳発達への環境化学物質の影響を行動解析およびパッチクランプ法により解析する。PCBは使用禁止とされてしまったため,他の環境化学物質(PFOS,イソフラボン,ガドリニウム)を用いる。 b. 当初,クロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq)により発達期小脳のTH応答遺伝子同定を目指していたが,ChIP-seqによる解析には研究資金が不足するため,まずはTH応答遺伝子の全容解明を目指すこととした。 c. 上記マウスモデルを用い、同定した標的遺伝子のバイサルファイトシーケンシングを行い、メチル化の変化を解析をおこなう。 d. THによるマウス小脳発達への影響をさらに解析するため,顆粒細胞のTH作用を減弱させたモデルマウスの作成を行う。 e. in silicoドッキング解析で化学物質とTRの結合部位を推測。並行して精製TRタンパク質を用いて化学物質との結合による立体構造変化を解析。特にポリフェノール類の網羅的解析を行う。 f. 化学物質による細胞膜を介するTH作用修飾とTR機能への影響を解析する。またT-Screen assayのメカニズム解析を行う。
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